3月4日『vs袖BEAM』

楽屋Aのユニット「袖BEAM」の芸人たちがそれぞれネタで戦いたい相手を呼んで、1vs1で戦うというライヴ。オーパスツーという漫才師が我々を指名してくれて、出演した。ちょっと今回はお呼ばれしたのもあり、楽屋Aも一応卒業したので、鬱陶しいOBのような気分で、身勝手な感想と批判を書こうと思う。

ゲストと戦う、コンセプトとしては面白いのにいざ始まると何か思ってたのと違ったのはやはり緊張感の無さで、全員出演のオープニングが20分くらいたらたらと続いた時点で雰囲気は緩みきっていた。まるで今から戦うような感じでは無く、既に全員が傷を舐め合うような時間が続いた。お客は15人程度だったが、出演者の誰かが「今日は集客少なくて~」みたいなことを言ったのは普通に嫌だった。自分は少ないなんて思わなかったし、こんな平日夜遅めの時間から来てくれるだけで嬉しいと感じていたからだ。聞くと、このvsシリーズは過去に何度もやっているらしく、だから雰囲気が緩むのも仕方無い。それか普段を見ていないので、今回は特別ちょっとそういう感じになっちゃった、だけかもしれんが。こうした定例ライヴは演る側が本当に強く意識しておかないと、自然と緩むから気を付けなければならない(一応付け加えておくと、ライヴによっては緩んでるくらいがちょうど良いのも勿論ある)。自分も定例の主催ライヴでゆるゆるになったことは何度もあるし、だからこそ外側に立つとよく見える。結果は、袖BEAM側が全員ゲストに敗北した。まあそこはどうでも良くて、全員ネタはちゃんとやっていたので何も無い。それよりもユニット独特の良さみたいなものがあまり感じられず、勿体無い気がした。今回のコーナー「芸人サクセス」は楽屋Aが考えたもので、ゲストたちの芸人活動における考えを引出そうという目論見だったが、MCがそこまで意識出来ていなかったのか全員が手探りでやっていた。言われたからやらされてる、が表に出過ぎているからお客も白ける。楽屋Aもその辺りがまだ見えていない。このコーナーを成立させるには、まずMCが一番肝心で、MCだけには意図を全て伝えた上でスムーズな聞き手と進行をしてもらう。ゲスト陣には何も伝えなくても、MCが上手ければ本番でいくらでも引き出せるから。どんなコーナーでもMCが面白い舵を取れば上手く転がる。簡単に言うと、MCが一番楽しそうにやっているコーナーは、大体が良いコーナーなのだ。作家や裏方がコーナーを考えるときは、演者のテンションが自然と上がるもの、お客が楽しくなるもの、ふざけまくってわけ分からんもの、の3つの軸で考えれば良いと思う。ゲストを立てるために今回は敢えて袖BEAMが引っ込んでいたのかもしれないが、ゲストを呼ぶなら立てつつも喰わなければいかんと思うし、舞台上でゲストたちが、袖BEAM凄いなお前ら…、と困ってるくらいがちょうど良い。おれがプロデューサーならもっと良い感じにやれるのではと本気で思う。芸人自体は面白い奴も揃っていて、オーパスツーは二人とも熱い漫才愛のある奴らだし、アオイサカナもブレずに良いセンスを持っていて、ゆるい13世も漫談ひとつで何かをしでかそうとしている。だからこそ、もっと勢いのあるユニットになれるはずだろう。

構成を変えるだけで、いくらでもやりようがある。他のライヴは知らんが、この「vs」を具体的に改善するとしたら…。オープニングは袖BEAMの連中のみで自己紹介、ゲスト呼び込みは無し、長くても10分くらいで切る。袖BEAM全員で勝とう、とか、前回はお前のせいで負けたとか、今回のゲストたちも強敵やぞ、とか、その辺を喋りながらスパッとネタへいく。とにかくオープニングは無駄に引き延ばさない、変にボケ過ぎない。MC以外が暴れるのはまだアリで、だがその場合もMCがどこかで切る。スパッとネタに行けば、緩みきることは無い。トップバッターもそのままの勢いで見やすくなる。全組ネタ終了後は、ゲストも含めて改めて全員舞台へ。お客さんから投票用紙を集める時間はMCだけで繋ぐよりも先に全員呼び込んだ方が良い。この時間は緩んで良い時間なので、わちゃわちゃしていれば良い。ゲストを一組ずつ紹介しつつ、何故呼んだか、戦ってみてどうだったか、トークしている間におそらく集計も終わるだろう。結果発表。もし袖BEAM側の負け数が多い場合は何らかの連帯罰ゲームをコーナーとして舞台上でやる。そしたら自然と仲の良さが出たり、誰かのせいにしたり、パワーバランスが崩れたりで、ユニットとしての色合いも深くなっていく。袖BEAM側が勝ったら、やったぞー、と、そのまま楽しい雰囲気でエンディング。

これくらいの方がライヴとしては見やすいだろうし、70分くらいになっても、何の問題も無い気がする。無理に引き延ばした90分を見せられるより、よっぽどマシ。

何もいりません。舞台に来てください。