ぐるぐる、へろへろ、ワーイ

金土日と、3日続けて舞台だった。自分は本当に体力が無い。死ぬほど疲れた。

(金)
東京の漫才師リボンズが主催のライヴ。彼らと会うのも一年以上ぶりであったが、再会しても、久しぶりっすねえ!なんて言わない。やあ、どうも、おう、って感じで、特に会話も無い。ここが新しい店だよ、と自慢げに言ったが、あんま変わらないっすね、とだけ言われた。

終演後、ピザを一緒にもさもさ食べた。時折はふざけながら、美味いね、そうっすね、明日帰るの?まあ適当に、などと言って、また静かな心地良い時間となる。リボンズの片割れが泊まる宿が谷町九丁目だと言うので、そこまで送っていった。じゃ、また、お疲れっす、と言って別れた。すぐ近くに、旧亀(以前やっていた我が店)があるので、見に行く。からっぽの店内をこっそり覗いて、あれこれと思い出した。

(土)
兼業芸人王といって、社会人や学生の傍ら芸事をしているアマチュア芸人たちによる大会の決勝戦。我々は司会と審査員を務めた。このライヴは昼からであった。前日の夜、明日は早起きしなければならない、という圧迫で神経症に陥り、ほとんど眠れず、また、日曜日の主催ライヴの内容が未だ決まっていないこともあり、ぐるぐるしていた。

けれども、出演者の兼業芸人たちは、一年を通して予選を勝ち抜いてきて、ようやく今日の決勝戦である。相当な気合いで臨んでいるはずだ。恥ずかしい司会と審査をしてはいけない。自分は本番前に栄養ドリンクをがぶ飲みして、本気本気と呟いた。

兼業芸人たちは、アマチュアとはいえ、かなりのレベルであったと思う。勿論、もう少しこうすれば良いのに、と思う点もいくつかあったが、皆それぞれの個性や発想が溢れる面白いネタをしていた。一人でコントをしていた男性が、自分は特に面白いと思った。それは王道真っ直ぐな一人コントで、非常に緻密な構成と見せ方をしていた。彼が断トツの優勝かと思ったが、結果は2位であった。

途中、我々も漫才をした。兼業芸人たちに恥じぬよう、彼らと同じ4分尺をやり切った。終演後は、一人で意味も無く街を自転車で徘徊した。ぐるぐると行ったり来たりした。小雨が降り出した。帰宅したらそのまま倒れて寝た。起きると夜中で、それからまた、眠れなかった。

(日)
雨が降っていた。頭痛がひどかったが、熱は無いので、おそらく寝不足だろう。最後は、ナイトオブコメディーという、毎月やっている主催ライヴである。このライヴの企画や諸々は全て自分が考えているのだが、いつもギリギリまで頭を悩ませた挙げ句、最終的には、あぁもう知らんと諦める。お客が沢山笑ってくれたら、やって良かった、と救われる。その繰り返しで今までずっとやってきた。

今回は、新メンバーのオーディションのようなものをした。応募してきたのは、一年目や初舞台の奴らである。どう転ぶか分からぬ、賭けのような企画であったが、結果は非常に熱く面白いものとなった。ほとんど初舞台で、あれだけ笑いが渦巻いたことは、彼にとっても大きな経験となっただろう。つくづく思う。笑いとは、不確かなものだ。その場の雰囲気や流れや運など、小さな奇跡の欠片が一挙に集まる瞬間がある。彼がネタをやっている裏で、沢山の笑い声を聞きながら、自分は何ともいえぬ感動を味わった。いけ、最後までやり抜け、と願いつつ、少し泣きそうになった。彼に対する思いというよりも、その欠片が集まる瞬間、舞台の奇跡を、目の当たりにしたからだ。

終演後、雨は止んでいた。出演者も口々に、今日は良いライヴだったと言った。このライヴは、いつも終演後に皆で軽く会議をする。皆の意見を、自分は尊重するようにしている。様々な意見が出た。自分は、変わることを恐れてはならない、と言った。

へろへろになっていた。頭痛と首痛に加えて、吐き気が止まらず、何とか自力で帰宅した。薬を飲んで、そのまま倒れて寝て起きて、夜中、とっても元気になっていた。頭痛も首痛も何も無く、頭は冴えていて、すっかり上機嫌であった。一人でワーイなんて踊りながら、甘いお菓子を沢山食べた。

何もいりません。舞台に来てください。