色は匂えど散りぬるを

こないだから、一人でこっそりと下手糞な歌や演奏を録音していた。壊れたパソコンを修理に出したらきちんと復活、データも全て残っていたので、何とかCDを作れた。改めて聴くと、何ともふにゃふにゃなものであった。誰かに聴かすのはやはり恥ずかしいので、躊躇している。

さて、自粛期間中に体重が増えてデブになった、という話をほうぼうから聞く。飯を食いすぎて、怠け、自堕落、ストレスが原因の、自粛太りである。自分の場合は少し痩せた。こないだ体重計に乗ると59キロだったので、今年の初め頃と比べると約2キロほど痩せたことになる。深夜にグラタンを食い、明け方に抹茶チョコレートも食うというのに、どういうことだろう。

恐るべきかな、生活。色々と考えた結果、やはり自分は生活というもの自体に嫌気がさしているのかもしれぬ。何が、ていねいな暮らし、だ。平仮名にすな阿呆んだら。生活には、常に意味が付随する。綺麗にするために掃除をして、腹を満たすために食事をする。そして明日のために眠る。もう、そうした意味から逃れたい。意味の無い遊びを、沢山やろうと思う。

夏が近付いてきて、蚊やハエが元気に飛び回っている。夜、虫さされスプレーを肌に噴射してから散歩した。あのスプレーの匂いを嗅ぐと、子供の頃の夏祭りの夜を思い出す。出掛ける前に、姉と並んで立ち、母親にスプレーで全身を噴射されるのだ。じいと待ちながら、早く祭りに行きたい気持ちで胸が高まる。シュー、はい、腕も、シュー、はい、足首も、シュー、はい、いってらっしゃい。そうして、姉と二人で小遣いを持ってルンルンで家を飛び出した。あの匂い。

家の近所のタチアオイは、もう萎れかけである。頭を垂れて、私と同じく、ふにゃふにゃのお花。それでもまだ少しだけ咲いていた。もうそんなに頑張らんでもええよ、と声を掛けた。

何もいりません。舞台に来てください。