アイスウインナー珈琲

駅前のサ店でアイスウインナー珈琲を頼んだ。自分は、たとえば漫才を考えるときなどは基本的にホット珈琲、と決まっているのだが、一人でサ店でのんびり、そしてちょっと気分が良いときには、ウインナー珈琲を飲む。ウインナー珈琲とは、珈琲の上にこんがり焼かれたウインナーが乗ったもの、というのはラッキーマンという漫画でのギャグである。スーパースターマンが家で作っていたのを覚えている。セミヌード、といって、蝉がヌードになっているギャグもあった。そんなことはどうでも良い。実際には、珈琲の上に生クリームが乗ったものを指す。甘い生クリームを珈琲に溶かしながら舐めつつ飲むと、ささやかな幸福を味わえる。通常、ウインナー珈琲といえば、ホットである。生クリームを溶かして飲むものなので、珈琲自体が熱くなければ意味が無いらしい。アイスの場合は、珈琲フロート、つまりアイス珈琲の上にアイスクリームを乗せたもの、が主流なのである。しかし自分は、アイスウインナー珈琲も好きで、これはこれで乙だよ、と思う。昔とあるサ店で頼んだとき、店のおばはんに、兄ちゃんウインナーいうたら普通ホットやで、と笑われたこともあるが、別に良いではないか。アイスウインナー珈琲に、更にガムシロップを垂らして、甘々にして飲むのである。時間が経てば、アイスとはいえ、生クリームは溶けて珈琲に混ざっていく。それでもグラス内部の側面には溶けきれなかった生クリームが未だへばりついていて、それをスプーンで掬い、あむあむと舐めるのだ。これが乙なのだ。この駅前の老舗サ店では、アイスウインナー珈琲を頼んでも店員が笑うことは無い。あむあむしながら、ごくごくと、頂いた。じっくりと甘美なひとときを過ごして、窓の外、暮れゆく街を眺めていたら、突如グルルルと腹が鳴った。そのとき自分は初めて異変に気が付いて、生クリームが少しばかり酸っぱかったことを思い出した。ただでさえアイス、そして賞味期限切れの生クリーム、驚異のダブルパンチで完全に腹を下した自分は、早々に便所に駆け込むのであった。

何もいりません。舞台に来てください。