ドラマ

自分の好きなものを堂々と言える人が羨ましい。自分も、それなりには言うけれど、中にはちょっと恥ずかしいというか、好きやけど人にはあまり言いたくないもの、がある。昔は、あややが好きだった。友達に言うと必ず馬鹿にされるので、言わなくなった。コンビニで売られているコーンマヨネーズパンも好きだったが、人にはあまり言わなかった。『こどものおもちゃ』という少女漫画も大好きだったが、言わなかった。けれども、もう自分も大人なのだし、好きなものは好き、と、堂々と言うべきなのかもしれない。

恥ずかしながら、連ドラを見ている。毎週録画をして連ドラを見る、なんて何年ぶりだろうか。昔は、『若葉のころ』や『みにくいアヒルの子』や『ラブジェネレーション』や『古畑任三郎』や『ショムニ』や『砂の器』や『マンハッタンラブストーリー』を欠かさず見ていたが、今ではテレビにてっきり興味が無くなり、毎週録画して見ているのは『探偵ナイトスクープ』と『デザインあ』と『水曜日のダウンタウン』くらいで、近頃のドラマなんぞ興味の欠片も無かった。ところが、たまたまテレビでやっていた連ドラに心を掴まれて、すぐさま毎週録画をした自分は、以来、毎週木曜日の夜を待ち続けるだけの日々を送っている。

『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』というドラマである。サブタイトルがさぶい。原作は弘兼憲史の漫画で、ビッグコミックでやっているのを何度か読んだことがある。大人の恋愛心情を描いた作品で、そのストーリーが面白い。

大筋は、家庭でうまくいっていない親父が職場の独身女と不倫する、というよくある話で、親父はおかんではなく独身女に惚れてしまった。家庭のことなんてどうでも良くなる。それじゃあおかんが可哀想かと思いきや、実はおかんも浮気をしていて、その相手がなんと、娘の恋人である若い青年なのだ。あら、いやらしい。おかんは年の差を感じつつも青年にときめいている。青年はマザコンのため、彼女よりも彼女のおかんの方がええかもしらん、と思い、彼女のおかん相手にキスをしたりする。そうなると娘が可哀想だと思いきや、娘も年の離れたおっさんと浮気をしていて、わたしよう考えたら青年よりもおっさんが好きやわ、と断言する。つまり、登場人物全員が浮気しているのである。全員が真剣な顔で浮気しているのが既に面白く、あかんと思いつつも抱きしめたり、キスしたり、電話したりするから、キスマークや着信でボロが出てバレていく。ホテルのエレベーターで、親父&独身女と、娘&おっさんの浮気ペアが鉢合わせする場面などは、カタルシスを感じずにはいられなかった。

親父役の佐々木蔵之介の顔面は圧巻で、どう考えてもヤバい奴にしか見えない。不倫相手といるときの楽しげな顔と、家族といるときの無愛想な顔、どちらにも確固たる闇が紛れていて、中年男の気持ち悪さを上手く表現している。おかん役の中山美穂のあざとい演技とぶりっ子具合も素晴らしい。ブルジョア暮らしの化身のような女で、すぐに正論を言う癖に、間違った行動ばかりする。旦那の携帯を勝手に見る、娘の鞄を勝手に漁る、娘の恋人と手を繋ぐ、一心不乱にパンを焼きまくる、など、更年期が止まらない様は痛快である。独身女役の黒木瞳は、寂しげなウサギのようで、か弱い。男に尽くす幸薄女ぶりが妙にエロスで、そそる。

自分としては、佐々木蔵之介は中山美穂と別れるべきではないかと思っている。で、黒木瞳と結婚して、慎ましく暮せば良い。中山美穂は一心不乱にパンを焼き続けた結果、パン屋として成功すれば良い。そんな結末を願っているのだが、果たしてどうなるのか。

物語は後半戦に入ったが、今から見ても十分に面白いので、おすすめです。

何もいりません。舞台に来てください。