眠るワニ

こうして舞台で人前に立つわけだから、ある程度他人にとやかく言われることは仕方無い。誰かに文句を言われても全く反省しないのが自分の良いところだ。多少はヘコむけれど、しばらくするとどうでも良くなって、妖怪の顔つきでなめ茸を食べている。時折「嶋仲さん好きですキャ」みたいな人もいるし、まあ良いだろう。こないだ芸人の奴が「やっぱ人気商売ですわ。人気出たら漫才もウケやすいし楽ですわ。女の子も抱きたい放題でっせ。嶋仲さんも髪切った方が良いんとちゃいまっか」と言っていて、結局そういうものかな、と思った。消費されながら消費していく。それはあまりに哀しいことであるし、けれども阿呆らしくて面白いことでもある。とりあえず散髪を済ませた自分は、いつものように暗がりで裸になって己と向き合う。幸福について、愛について、そして死について。溜め息をぐっと堪えて飲み込む。何かもっと爆裂にしょうもない素敵なアイデアで全員を翻弄、終電とかどうでもええわ、となるくらいに高揚させて酩酊させて、ぶくぶくに満足させたい。

後ろで何やらゴソゴソいうから振り返ると、一匹のワニがすやすやと眠っていた。楽しげな夢を見ているようだった。それはあまりに愛おしい姿で、で、ええと、だから、…忘れた。ひょいと抱きかかえると、自分もまた眠ることにした。


何もいりません。舞台に来てください。