夏は終わらない

勝手に散々楽しんで、ここは糞だらけ、後は何も言わずに、いつの間にか通り過ぎて、消えていく。あなたも結局そうでしたか。夏のせいで、おれは全て忘れてしまいそうになる。あの飯の味や、あの映画のオチや、あの人の名字や、あの思い出たち。まどろむ頭でアイスクリームが溶けていく。このままでは手がべとべとになってしまうよ。スクリーンには誰かの幸せそうな顔たちと誰かの寂しそうな顔たちが無造作に映し出されていて、一人でそれをぼんやりと眺めていた。誰かの心が叫んだり、泣いたり、怒ったり、して、想像ではあるが、きっと皆も大変なんだろうなと思う。いつかおれにも理解出来るかな。よく分かんないまま終わるのかな。繊細なる狂人と、おこがましい凡人と、噂好きのペリカンと、欲望まみれのアルパカと、溢れるお湯と、カチカチの氷と…。一体誰のことだと思う?まさか自分ではないと思ってる?お前のことだよ。さようなら。

夏は終わらない。頭がガンガンするほど猛烈に暑い。ようやく部屋に帰れば、不意にきみの匂いがした。机の下を覗いたら、三角座りしてた。消えずに、ずっとここにいて欲しい。


何もいりません。舞台に来てください。