東へ①

朝、ぱっちり起きて、偉いぞ偉いぞと自分を褒めていたら、いつの間にか随分と時間が経っており、慌てて家を出た。猛暑の中を走って電車に乗り込み携帯で調べると、新大阪駅に着くのが11:49と出ている。新幹線の出発は11:54であった。どうしてぼくはいつもこうなんだろう、そろそろ誰か殺してくれないかな、と思う。とはいえ、新大阪駅に着き、ダッシュで駅弁を買って新幹線に無事乗り込むことが出来たので、偉いぞ偉いぞ、汗だくでガッツポーズ、をしたのも束の間、昨日の夜必死で作った物販用の漫才CDを一式忘れたことに気付いて、再びへこむ。

東京駅までの間は、弁当、喫煙、読書、と有意義な時間を過ごした。最近買った、歌人の笹井宏之という人の本(東京行くときに読むと決めてた)は、とても良かった。空中に沢山の言葉が浮かんでいて、あちこちからぐいと糸を引っ張ると、ひとつのイメージが現れる。すぐに影響される自分は、車窓を眺めながらノートを広げてみたが、ちっとも良いのが出来なかった。

「もう二度と あなたに会えぬ余生なら いっそ私はぶたになりたい」
「ぬけがらが 積もり積もったシャッター街 老婆が転ぶ夏の朝焼け」
「みずみずしい きみのはだかのカラクリは ゆうべプリンを平らげたから」
「早歩き 日サロ帰りの細マッチョ 鼻の穴から糸が出てます」
「なつかしい 味がするとか言わないで ぼくもう少しでいける気がする」

と、ここまで書いて、短歌はもう辞めた。そうこうしているうちに東京に着いて、電車を乗り継ぎ阿佐ヶ谷へ行く。何度か来たことがあるが、良い街である。自分は新宿、渋谷、池袋などへ行くと大抵気分が悪くなるのだが、阿佐ヶ谷は落ち着く。パールセンターという商店街を抜けて、すずらん通りの半ばにある、阿佐ヶ谷アートスペースプロットというところで、ライヴに出演した。

東京の人、色々出ていたけれど、楽屋では誰とも喋らなかった。寂。夜は新宿の安宿。しんじゅくのあんじゅく。明日もライヴに出て、明後日帰る。

何もいりません。舞台に来てください。