らんだ

ふと気が付くと、年が明けてからもう15日も経過していた。店も潰れて、仕事もせず、ライヴもせず、ここ何日間の自分はひたすら瞑想という名の怠惰に身を任せていた。誰に会うわけでも無く、昨日も今日も家の中、一人でくしゃみをしていた。外は相変わらず寒そうで、まったく世の中はシビアだ、空はすぐに暗くなり街は寒波に包まれるから、外へ出ようにも出られない。頭の中ではさまざまな言葉が渦巻いて、そろそろ気が狂いそうな予感、だが、飲まず食わず動かずの自分は何故か少し笑っていた。

きっとうまくいく。

こうなることは予想していたけれど、どうやら自分は本当に懶惰らしい(これは「らんだ」と読みます。意味は勝手に調べなさい)。ところで、沢蟹のかにくんは、どうしようも無い奴である。日中はとことん引き篭もり、夜中になればコソコソ動く、といった具合で、そんなことではいけないぞ、しっかりしろ、と主人が叱咤しても、つぶらな瞳でただこちらを見ているだけ。自分は決して沢蟹になどなりたくない、と思った。ズル、とまた鼻が出て、イラ、とする。いい加減、耳鼻科へ行こう。話はそれからだ。天使は元気だろうか。春が来ればまた会えるだろうか。蒸しパンを食べたい。マシュマロを食べたい。ラクダに乗りたい。お金はもう無い。全員くたばれ。今こうして昼からずっと鼻水をかむだけの時を過ごしていると、あかんやん、と思う。

思ったので外へ出てみた。およ?と思った。案外寒くないのである。周りを見渡しても、皆そこまで厚着をしていない。対する自分は、シャツ、セーター、カーディガン、コート、マフラー、手袋、ニット帽、とぐるぐる巻きで、阿呆のようであった。ぬくぬく、むしろ、じんわりと汗が滲むほどで、そうか、自部屋でじいっとしているから寒かっただけなのか、と思った。何だか楽しくなった自分は小走りで街を駆ける。今日は一体何曜日だ。どこかに金は落ちていないか。帰ったら鍋でもしよう。明日は絶対早起きするぜ。腹筋もするぜ。おれは不滅の男!

もう少しの辛抱だ。

何もいりません。舞台に来てください。