ぬくもり

今日(22日)は、天赦日と一粒万倍日が重なる日、つまり、一年の中でも非常に縁起の良い、運気の高い日であったらしい。テレビのワイドショーで自分はそれを見た。

起きて、風呂場で髭を剃る。手を滑らせて、思い切り顎の辺りを切った。嫌な予感がしたのでそれ以上剃ることは止めた。外はしとしと雨で、なぜか薄着をしてしまった自分は傘も持たずに、寒う、と呟きながら会場へ向かい、ライヴをした。いつも通りに楽しく演り終えた。

夜中になって、様々な考えを巡らせながら、真新しいシガレット・ケースから煙草を抜いて、雨音を聞きながらゆっくりと吸い終えると、何だか、幸せな気持ちになった。何でもかんでも消費される時代に、一体何を残すことが出来るだろうかと、思った。

たとえば近頃流行りの電子マネー、ペイ払い、などに関しても、自分は脅威を感じずにはいられない。それは勿論、便利で申し分無いのかもしれぬ。しかし自分は、ジャリ銭の重なる音やお札の匂いといったものに、未だ安心感を覚える。思わず小銭を落として拾うときの、あぁ勿体無い、という気持ち。くしゃくしゃのお札をポケットから出すときの、何ともいえぬやさぐれ感。

便利に、スマートに、やろうと思えばいくらでも出来る。使えるものは多いに活用すれば良い。寂しさを紛らわす手段など、インターネットに溢れている。そうやって、上手いことスマートに暮らしていくことが、幸せへの近道です。ちっぽけなポリシーや小難しい考えは、まるで必要ありません。何もかもを利用して、ショートカットで駆け抜けることが、現代における成功の秘訣です。その点、あなたは愚図愚図と、ノロノロと、いつまで経ってもしょうがない。だからあなたは駄目なのです。

けれども自分は、あなたのぬくもりを、きっと忘れないと思う。

何もいりません。舞台に来てください。