S0(寺岡さんのnoteへ)

ヤング嶋仲に、note書いて下さい言われたので。|山が動く寺岡 #note https://note.com/yamagaugoku57ay/n/nc5a7d74f0504



芸人の先輩でもある寺岡氏がnoteを始めたものの、さほど更新しないので(自分は時折こっそりとチェックしている)、「もっと書いてくださいヨ」と言った。すると即、更新をしてくれた。氏のそういったところが自分は好きなのである。


氏がどういった人であるかは、以前自分がnoteに書きました。
寺岡氏|ヤング嶋仲 #note https://note.com/shimayoung/n/nf786d4dd146c



自分は、氏のネタと同じくらいに、氏の書く文章に興味があるので、もっと色々なことを書いて欲しいと思う。

何年か前、詩の朗読ライヴが行われた際に、寺岡氏が書いた長編の詩があり(結局それは氏本人ではなく別の方が朗読したのだが)、それは、今まで出会ったことの無いレベルの破壊力を持った詩であった。自分は詩の良し悪しには疎く興味も無いが、そしてまた、詩の感想を上手く言葉には現せられぬが、ともかく、あの詩は強烈だと思った。勿論、それを読んだ方の表現力も素晴らしいのだが、寺岡氏の書く言葉の凄み、恐るべし。流石は浜学園S0出身である。

ということで、浜学園のS0(エスゼロ)について、自分も書こうと思う。まずは寺岡氏のnoteを読んでください。

※氏のnoteには少し間違いがあり、浜学園へ通っていたのは自分である。相方は希学園(のぞみがくえん)へ通っていた。よって、自分の方が詳しい。

※また、これは当時の浜学園のシステムであり、更に個人的な思い出と印象のため、事実と異なる点もあると思う。

浜と希というのは、大阪市内の進学塾二大巨頭であった。中学受験を控えた小学生たちが、夕方から夜までみっちりと勉強をする。当時の浜学園のやり方は完全にスパルタで、たとえば講師が硬い棒を持ちながら授業をしていて怒鳴りながら机を蹴り飛ばすことなど、頻繁にあった。また受験シーズンになると、生徒は皆、志望校の書かれたハチマキを買わされる。それを巻いて勉強をし、全員で「〇〇に絶対合格するぞー!」「絶対合格するぞー!」と叫ぶのである。照れて叫ばなければ、やはり怒鳴られる。男気溢れる応援団の如く、大人も子供も、喉がちぎれるほどの大声で絶叫する。まるでヤバい洗脳のような空間であった。

小学生の自分は、そこに約二年間通っていた。

低学年の頃は公文式、他にもいくつか習い事をしていて、クラスではカシコの部類だった自分は、宿題をせずとも担任に怒られなかった。そして五年生のときに、中学受験をすると決めた。その理由は、母親が喜ぶから、という単純なもので、当時マザコンであった自分は、ほとんど全ての意思と行動を母親に任せていたため、習い事も全て母親の言う通りにやっていた。己の意思も勿論あったが、母親に褒められるための行動をすることに喜びを感じていたのは否めない。中学受験においても、「受験して私立行き」と母親に言われて、「ウン」と言っただけのことである。「どこ行けば良いん?」と聞く自分に、母親はとある私立の学校の名を口にして、「合格したら格好良いぞぉ」と笑うので、自分はそこへ行く目標を立てた。しばらくして、母親は死んだ。

中学受験をするために、公文式やその他の習い事を全て辞めた自分は、父親に頼んで、浜学園へ通わせて貰った。そこは勉強の猛者たちが関西中から集うような場所であった。まず、塾に入るための入塾試験がある。自分の同級生などは入塾試験に落ちて、通うことすら許されなかったほどだ。クラスは完全に成績順に分けられた。自分の時代は、上から、S1、S2、H1~H6、A1~A4、という構成で、入塾試験の結果、まず自分はH3(これは、ハイスリーと呼ぶ)クラスに入った。偏差値60前後といったところである。

それからは、定期的に行われる塾内試験の結果によって、クラスが変動した。自分はやがてH1(ハイワン)まで昇格したが、Sクラスに入るのは至難の業で、H1とH2を行ったり来たりしていた。一度だけS2(エスツー)に入ったことがあり、そのときは嬉しさとともに、やや緊張しながら教室に入ったものである。Sクラスの人間は、雰囲気もHクラスとはまるで違った。皆、ガリ勉というよりも、インテリな不良、といった感じで、大人びたいじめっ子基質の人間たちばかりだった。万引きをしている奴や、ゲームが滅茶苦茶上手い奴、エロに精通している奴などがいた。自分は完全にびびったが、負けじと、ボールペンのインクを床にぶちまけるなどして、その仲間に入れてもらった。

そこで耳にしたのが、「実はS1の上にもうひとつS0というクラスがある」という噂である。S0は、いわば特待生のようなもので、ごくわずかの、化け物じみた頭脳を持つ集団であるらしかった。まるで都市伝説のような話である。少年ジャンプのBOYという漫画でそんなんあったな、ミリオンナンバーって不良グループのナンバー1倒した後に真のボスみたいな感じでナンバー0が出てくるやつ。と自分はどこか信じていなかった。

受験に見事合格して目当ての中学に入った自分は、そこで今の相方とも出会い、共に落ちぶれて、勉強することを放棄した。そして、その頃に仲良くなった一人の友人が、実は「浜のS0」出身であったと聞いて、自分は慄いた。S0は本当に存在していたのである。ちなみにその友人もまた、中学に入って完全に勉強のやる気を失ったようで、授業中は常に涎を垂らして寝ていた。あるときなどは、鞄の中からおもむろに枕を取り出した。教科書やノートの類を一切入れずに枕のみを入れて持ってきたのである。これでヨシ、と机の上に枕を置いてすやすやと眠る、といった具合で、天才なのか阿呆なのかよく分からぬ奴だった。彼は中学三年でギャンブル中毒に陥り、パチンコ、パチスロ、そして雀荘に入り浸り始めた。今度は鞄に雀牌を入れて持ってきて、授業中に独自の麻雀必勝法を研究していた。段々と遅刻、早退を繰り返すようになり、親の金を散財した挙げ句に中退した。といっても不良ではなく、気の良い、ひょうきんなキチガイであった。何年か前に会ったときも、相変わらず犯罪すれすれのような暮らしぶりをしているようだった。彼については様々な話があるので、またいずれ書こうと思う。

ともかく「S0」なんぞに居た小学生は、生半可な子供では無い。何せ、存在が都市伝説である。勉強が出来過ぎるあまりに、少しばかりネジが狂ってしまった、天才たちの巣窟。寺岡氏がS0出身というのを聞いたとき、自分は妙に納得してしまった。S0芸人、寺岡さんくらいじゃないですか。

何もいりません。舞台に来てください。