ニコニコ乞食

右のアバラ骨と胸骨のあたりがずっと痛い。こないだ舞台で相方に投げ飛ばされて強打したのが原因かもしれぬ。呼吸をするたびジンジンと骨が響き、暗鬱な心になる。

今日は夕方から母方の祖母の家に行った。自分は、父方の祖父と祖母と母方の祖父を亡くしているため、残り一人のお婆ということになる。祖母は一人きりで、犬とともに暮らしている。耳が遠いので、電話をしてもまるで会話にならない。会うときは、自分は声を舞台並みのボリュームに上げて話すようにしている。

相変わらず祖母は元気そうだった。犬は以前よりも確実に丸みが増していて、ゴロゴロとしていた。自分も隣でゴロゴロしながら、キスなどして、いちゃついた。手持ちが4000円しか無かったので、祖母に金をせびろうかと思ったが、「お金も無くなってきたわ。もうええ加減死ななあかんわ」という言葉を聞いて、自分はせびるのを止めた。ま、もうちょい生きたらええやんか、と言って、家を後にした。

心斎橋に来ると、中国人が虫の如く街にたかっていた。虫国人ではないか。こうした人混みが自分は苦手で、自然と殺人犯のような顔つきになってしまう。どこへ行くわけでも無いのに矢鱈と早歩きで、乾燥した唇を舐めながら商店街を突き抜けた。全員殺すとしたら、刃物よりも、銃よりも、やはり毒ガスだ、などと考えながら、すれ違う人々の顔を一人ずつ確認した。

何となくスキニーズボンが欲しくなったので、服屋で安物(2500円)を買った。レジで会計しているときに、似たようなズボンを既に持っていることを思い出した。あぁ、色違いにすれば良かったじゃん、と瞬時に思ったのだが、一切表情には出さずに、スムーズな会計を果たした。後は、寄ったブック・オフで欲しかった漫画「愛しのアイリーン上・下」(計1300円)を見つけたので購入、チェーンのサ店で珈琲(250円)を飲めば、ちょうど無一文になった。夜も更けて、すっかり乞食になった自分は、ニコニコ、鼻歌で帰宅した。

何もいりません。舞台に来てください。