天プラ気分

まるで死んだ虫であった。心と頭がひからびてしまって、だからといって誰かに水を与えてもらえるわけでも無く、一人で口をぱくぱくさせながら天を仰いでいた。夜の片隅に寝そべって、食べかけの煎餅を片手に、永遠の怠惰にまどろむ男。ごくり、と唾を飲み込んで、私は瞬きひとつせずに真っ白な天井を真っ直ぐに見つめた。それから、すうっと息を吸い込んで、しばらく止めた。数秒経って、ふううう、と吐いた。天プラ。自分でも何故そんな言葉が出たのか分からない。しかし、そのとき確かに私は蚊の鳴くような声で「天プラ」と、呟いたのである。

呟いたら何となく身軽になった。あなたも一度お試しください。って、そこにいるのは誰?あぁ、何だ、ただの目か。誰かがこそこそ見てくるから、ほんと嫌んなるよね。いっそのこと衣に身を包んで油に飛び込もうかな。それとも、きみと二人でお風呂に入ろうかな。月に見とれてつまづくきみと、きみの足に見とれて頭をぶつける私だ。ぼくらは失敗ばかりだけど、そんなの気にせずやっていこうな。天プラ気分で春を闊歩しような。


何もいりません。舞台に来てください。