スライド映写機

こないだ、例の如く、池田にある五月山動物園へウォンバット(自分の最も愛する生き物、かつ世界で最もかわゆい生き物)を見に行った際のこと。途中、古民家や酒蔵が立ち並ぶ町の路地を歩いていると、一軒のボロ家があり、ガレージには廃棄物やガラクタが山積みになっていて、ご自由にお持ち帰りください、と紙貼りされていたので、立ち止まった自分は品定めを始めた。

ケチンボ根性で、何かおもろい物は無いだろかと見てみたが、無料というだけあって、所詮はゴミ溜めにすぎず、腐ったトマトの缶詰、泥だらけのプラスチック器具、黒ずんだクリアファイル、埃グラス、黄ばみキーホルダー類、90年代無名グラビアアイドルビデオ、開かないメタルラック、ボロ布、などばかりであったが、その中にひとつ、小ぶりの汚れた黄緑色のポーチ鞄があり、ファスナーを開けてみると、中に入っていたのは、なんとミニスライド映写機だったのである。

自分はそれを持ち帰り、家でスライド映写をしようと、思った。しかし、使い方が全く分からぬ。コンセントを差してスイッチをひねれば光が付くのだが、それをどう、映写させるのか、分からぬ。そもそも、フィルムすら、無い。何よりも、スライド映写がどういうものなのか、あまりよく知らない。光のつく部分が明らかに焦げ臭い。レンズもしっかりと汚れている。おそらく部品も足りていない気がする。悪戦苦闘するうちに、使い方は間違えているだろうが、小さな透明ビニールに「うんこ」と書いてそれを恐る恐るレンズの前に当ててみると、壁に大きく「うんこ」と映ったので、一応は何かに使えると思って、満足した。

何もいりません。舞台に来てください。