覚えてる?

ぼんやりとした不安は常にある。自分のことだけでなく、この国で生活することについて、不確かな恐怖を感じている。世の中は我々が思っている以上に、もう既に、狂ってしまっているのかもしれない。もしも今清志郎が生きていたら何を歌うかな、と考える。コロナの時期にはきっと格好良いマスクを付けて、コロナの歌を歌っただろうな。ぼんやりとした不安はあるが、かといって自分は特に何もせずに当たり前みたいな顔で暮らしている。正直、いつ爆弾が落ちてもおかしくないし、大地震だっていつ来るか分からない。そのときはそのときなのかな。どうにかなるものなのかな。分からないことが多すぎて、何も知らなくて、だから不安を感じていること自体が阿呆なのかもしれぬ。

穏やかに死にたいきみと、共に愉快に暮らしたい。悲しい事件はいくらでもあって、だけど悲しむ暇も無いままに日付けが変わる。仕事もあるし、宿題あるし、もう家を出なくちゃいけない時間だ。そして全ての涙はハードデイズナイトに飲み込まれていく。悲しみが消えるわけでは無い。そう簡単な話ではないのだ。お前の身体にこびりついた幾つもの悲しみを、お前は剥がすことが出来るのか。

あのときのこと、覚えてるかい。今日のことは、いつまで覚えてられるかな。永遠に忘れられないことが、きっときみにもあるだろう。

じゃあ?あのときの月は?あのときの手紙は。あのときの会話は。あのときのユーモアは。あのときの匂いは。大切な思い出をペタペタと身体に貼り付けて笑う。そうするしかない。そう確か…ね、いつやったかな、そんなことがありました、今思うと変なこと、だけど今でもちゃんと、覚えてるよ。

何もいりません。舞台に来てください。