今日は…

遅刻する夢を見て、朝起きたら10時55分だった。ヤバイ、と思った。遅刻するからである。自分は気持ちを一旦落ち着かせるために、煙草に火を付けた。最寄りの駅から出発の電車、11時26分に乗らなければならない。そのためには最悪でも11時18分には家を出なければならない。残り時間は23分、その間に準備をしなくては。とりあえずシャワーは浴びたい。昨日、一昨日と風呂に入っていない自分は汚物人間である。シャワー浴びて、着替えて、あ、もう衣装スーツ着て行ったらええか、で、ケータイ煙草財布リップクリーム持って、GOやな、珈琲淹れて飲みたいけど我慢しよう。髪乾かしてる暇も無いわ。歯も磨かなあかんし。オッケー。ん。今日も寒いな。はあ、おしっこしたい。あ、メールが来てる。ああ、えっと…。

いつの間にか、11時8分。自分は高速でシャワーを浴びて、スーツに着替えて、11時20分、家を飛び出てそのまま走った。何とか最寄りの駅、電車には間に合ったので、ご褒美に珈琲を買って飲んだ。

四條畷駅に着くと、相方と主催の方がすでに待っていた。挨拶もそこそこに、地元の小さな公民館へ行く。新年会のようなイベントで、聞くと、お客さんは30名ほどで、平均年齢は75歳とのことである。そこで漫才を、45分やってくれとの依頼だ。自分は欠伸をしながら、目を擦った。小さなリビングのような場所で皆さんと一緒に弁当を食べる。それほど盛り上がっていない。その後、控室で相方と、どうしよ、ヤバいな、とりあえずゆっくり喋ろ、と言い、自分は外に出て煙草を吸った。気持ち良いくらいの青空で、車が通る古びた商店会の向こうには山がそびえていた。

漫才は、なかなかにウケた。今日のために作った細かいネタ、学生時代の話、出身地の話、大阪の街の話、初夢の話、平成も終わる話、亥年の話、などを繋ぎ合わせつつ、途中には質問コーナーなど挟みながら、本ネタは単独ライヴなどで演った長尺物をひとつ、演った。お客さんは最後までしっかりと見てくれて、嬉しかった。どうもありがとうございましたー、と言うと、お客さんの一人に、何か歌って!と言われて、なぜか皆拍手する。ザ・ぼんちやないねんから、と言っていると、カラオケの機械が出てきた。

小声で、どうする?硝子の少年は?と言うと相方は、うわ、おれもキンキキッズやと思ってた。二人でフルコーラスをデュエット熱唱して(自分が剛で相方が光一)、大拍手で終わった。ギャラを頂いて、財布もほくほく、外に出たらまだ昼間で、身も心もほくほくとした。

初めての土地に来たら、ぶらつきたくなる性分の自分は、真っ直ぐには帰らず、この辺りには楠木正行の墓がある、と聞いたので、向かう。楠木正行は、かの有名な楠木正成の息子で、南北朝の時代に小楠公と呼ばれたが、四條畷の戦いに敗れ殺された。小楠公の墓は立派で、樹齢550年になる二本の楠の大木に挾まれていた。この辺りの住所はずばり、楠公、と言う。ほええ、と思いつつ、煙草を吸おうとしたが、貼り紙には、神聖なる地のため、飲食、喫煙、犬の散歩、その他を禁ずる、と筆で書かれていたので、煙草を仕舞って深呼吸をした。その他、って何やろう。脱糞とかかな。

ぶらぶら歩くが、洗濯屋、スナック、畳屋、スーパー、薬局、ブティック、パチンコ、が並ぶばかりで、サ店が見つからない。ご褒美に甘いケーキとカフェオーレでも頂きたいところなのだが…、と思いつつ、ずんずら歩いて駅近辺を何周もする。結局、喫茶ひまわりという可愛らしいサ店に入り、小休止する。可愛らしいおばさま店主に、にんじんとりんごの生ジュースがオススメだと言われて、半信半疑で頼むと美味かった。

夕方、近所の古本屋で古本を二冊購入し、一旦帰宅して、ふにゃふにゃになって、ふやけた。

夜、自分の店へ行き、豚の生姜焼きを作って、ふにゃふにゃして、夜中に帰宅した。

何もいりません。舞台に来てください。