卑しい口元

昼過ぎに起きて、実家の車を借りて姉とともに祖母宅へ行った。事故ったぶりの運転で少し緊張したが、無事に到着出来て良かった。米寿の祖母は、耳も遠くてまるで呆けているのだが、とにかくお喋りで、たまに凶悪な冗談も言うので面白い。車で来たと言う自分に矢鱈とビールを勧めてきた。飼い犬のジェリーは老犬で、こないだから足と目が悪くてほとんど寝たきりのようになってしまったそうで、祖母が年末に病院に預けたという。心配である。人も犬も、いずれは年老いて、病院や施設の世話にならなければ生きていけなくなる。それはもう、仕方の無いことだと思う。

帰り際、祖母は寂しそうに涙目になっていて、ちょっと待ち、と言うので自分はお年玉をくれるのかと待ち構えた。そうして財布を取り出し、ぽち袋に札を入れる祖母の姿を横目で確認した。もうええで気使わんでも、と言う自分の口元は卑しくひん曲がっていたであろう。祖母は、これで何か買ってあげ、と言いながら自分をスルーして姉にぽち袋を渡した。姪、つまり祖母にとっての曾孫、彼女へのお年玉だけを用意していたようである。姉は、ありがと、と受け取り、じゃ帰るわ、と玄関で靴を履き始めた。自分も後に続いた。

明日からまた店や舞台などが始まる。アルバイトもたまに行く。もう少し休みたい。


何もいりません。舞台に来てください。