テレフォン・トーク

RCサクセションの「2時間35分」という歌がある。それはきみと2時間35分も電話をした、新記録だ、素晴らしい夜だ、という内容なのだが、私たちのテレフォン・トークはそれどころでは無い。2時間3時間はザラだし、一番長いので7時間22分という記録もある。そんなに一体何を話すことがあるの、と思う。勿論ずっと和気藹々と話しているわけでも無く、悲しい話や虚しい話もするし、嘘をつき合うこともある。ひたすらのしりとりもあれば、トイレに行く時間もある。片方が寝てしまうこともあれば、互いの部屋に吹き込む風の音がカタカタと鳴り合うだけの沈黙時間もある。こないだは、一触即発罵詈雑言の雨嵐で思わず耳から血が出た。けれども私たちは、一向に自分から電話を切ろうとしないのだ。さようならの一言が言えぬのだ。未だにお互いの顔すら知らないのに、今夜もまた着信音が鳴って、もしもし、もしもし。そうして、朝日が昇り、携帯の電波が途切れて、電源シャットダウンするまで、いつまでも繋がっている。



何もいりません。舞台に来てください。