コアラ人間は空を見る

確か去年であったが、占い師に診てもらったところ、2020年には今まで積み上げてきたものが花開く、と言われたことを覚えている。とんだペテン師ではないか。2020年を目前に、積み上げてきたものが取り壊しの憂き目に合うというのに、花もつぼみもあるものか。また、あなたは金に困ることは無い、とも言われたが、はっきり言って、わたしは金のことで困り果てている。畜生。

店が潰れることをTwitterに書いた。すると、大勢の人たちがリツイートやイイネをしてくれた。沢山のイイネを見て、何もええこと無いわ阿呆!なんて思うのは、あまりに卑屈過ぎる。リツイートもイイネもただ素直に嬉しく、しょんぼりとした顔で微笑んだ。

そして夜中に自分は禁断のエゴサーチを犯して、リツイートやイイネをしてくれた人たちの呟きを覗き見た。ある種の怖いもの見たさではあったが、出来るだけ細目にして、ひとつひとつを、こっそりと読んだ。そこには、「まじかよー」「ショックなんですけどー」「マジ残念」「一回くらい行きたかった」「心の拠り所でした。とても寂しく思います。出来ることなら移転して続けて欲しいです。」といった、大勢の見知らぬ人たちの愛と哀が込められた呟きが並んでおり、一通り目を通し終えた自分は、妙な幸福感に満たされた。大勢の人の寂しさが、己の幸福感に繫がったのである。なんかそれって素敵やん、と顎も自動的にしゃくれた。勿論、呟きの中には上から目線の鬱陶しいものもあったが、別段何も思わなかった。

感謝と悲しみと励ましのメールをくれた、見知らぬ人もいた。自分は心を込めて返信をした。改めて、店を始めて良かったと思う。こうしたときに、明るい、前向きなことばかり言う輩は信用出来ない。

元来、生来、怠け者&寂しがり屋の自分は、一人きりでは何も出来ないのである。しかし、今年が終わる頃には、また、年が明ける頃には、何らかの行動を起こさなければ、おそらく干からびてしまうに違いない。コアラ人間はゆっくりと木に登り、そして空を見て、ぼんやりと未来を想う。どこかで覚悟を決めなければならないのかもしれない。

何もいりません。舞台に来てください。