汚い夢

「おれたちはもうヘトヘトだった。大きめの車2台に4人ずつ、計8人、荷物も多い、腹も減ったし、服も臭いし、髪の毛はべたべたで、だけど楽しかった、ひと仕事終えて、ようやくこの街に帰ってきたのだ。

「皆で風呂いこや、風呂」
助手席の奴が言うので、自分はこの時間でも空いているスーパー銭湯を調べてナビを入れつつ、もう一方の車にも連絡するよう伝える。2キロ走ればちょうどあるわ。何ていうとこ。天の湯神、やて。あぁ、行ったことあるわ。ほんまか。腹減った。ハンバーグ食べたいな。フードコートあるかな。なんか臭ない?ごめん屁こいたわ。くっさ。

到着した。屋外駐車場にて、我々は揃いも揃って両手を挙げながら欠伸をする。後の車が着くのを待とう、と言う自分に対して、あかん我慢できひん、と残りの3人は駆け出した。すっかり日も沈みかけていた。天の湯神は外から見ると意外と小さめの建物で、しかし屋外駐車場は矢鱈と広かった。自分は痒すぎる頭皮を掻きながら、早く風呂に入りたい、と思った。

やがてもう1台が到着して、皆が車から降りた。あれ?他は。あいつら先行きよってん。お前だけずっと待ってたん。おん。阿呆やん。ほな、行こ。

天の湯神に入り、券売機で入浴券を買おうとすると、財布が無い。勿論、他の奴らは全員、お先失礼、である。リュックサックを下ろして探すが、見つからない。車に忘れたのか、くそ。一人走って、駐車場へ戻る。広い空き地だから、なかなか自分の車が見つからない。ようやく見つけて車を開けようとしたら、今度は鍵が無い。あぁ、置いてきたリュックサックのポケットに入れたままだ。踵を返して天の湯神へ。再び券売機へ戻ると、床に置いたはずのリュックサックが無い。いくら探しても見つからない。受付の係に尋ねると、リュックサックの落とし物を預かっていると言う。それ私のです。返して貰おうとすると、念の為に身分確認書を出せと言う。免許証は財布の中に入っている。その財布は車の中にある。そして車の鍵はというと、リュックサックの中にある。堂々巡りであった。何とか受付を説得して、リュックサックを返して貰えた自分は、改めて駐車場へ出た。

もはや汗だくで、一刻も早く風呂に入りたかった。何度往復する気だ。腹が立つ。車を開けると、驚いた。連れの一人が見知らぬギャルとバックシートで裸のまま抱き合っていたのである。何してんのお前。何って、セックスやん。風呂行かんの。これ終わったら行くわ。風呂入ってからすればええのに。あ、そうや、残ったカレーあるけど食う?

紙皿に載せられたぐちゃぐちゃのカレー。嫌な臭いがした。ギャルはずっと真顔だった。

ええわ。財布を取り、ドアを閉めた。もう空は暗かった。こいつら中におるんなら、鍵無くても開けれたやん、と思う。」

結局、風呂に入る前に目が覚めた。全体的に、汗臭い感じの、汚い夢だった。考えてみると、最初に駐車場に着いたとき、同乗者は皆風呂へ行き、自分も車を降りて鍵を閉めたので、車中には誰もいなかったはずである。それなのに連れはギャルと車中にいた。この辺りの辻褄の合わなさが、夢の良いところである。

何もいりません。舞台に来てください。