邪悪陰毛

いつの間にか夏は過ぎ去って、肌寒くなった。暑いよりかはよっぽどマシで、躊躇せずに長袖を着られることが嬉しい。街を歩けば、何となく冬の匂いがする。新しいタートルネックかジャケットを買いに行こうかと思う。

こないだ、風呂に浸かりながら、ぼんやりと未来を想った。やるべきことと、やりたいこと、やりたくないこと、が多すぎて、なかなか大変であった。大丈夫かな、と思って、あ、大丈夫じゃないかも、と思った途端、とてつもない不安が襲って来て、気が付くと、得体の知れぬ、暗黒の、人型をしたもわもわが目の前に立っていて、丸裸の自分に、残念でした、と告げた。邪悪な声色だった。

ヤバい気がした自分は、咄嗟に浴槽を上がり、剃刀を握り締めると、股間に石鹸を塗りたくり、すかさず陰毛を剃り落とした。無我夢中で剃り落としたものだから、股間はつるつるのぶつぶつになった。辺りに散らばる邪悪な陰毛をシャワーで洗い流して、あぁ、危ないところだった、と一息ついて安心を得た。

何もいりません。舞台に来てください。