本当の本当はホットな

店を始めて良かったことは沢山あるが、一番は、色々な人たちと話し、交流出来たことだろう。逆に店を始めて良くなかったことは、色々な人たちが来て勝手に色々言ってくること。もうすぐ9周年である。

人との距離感を大切にしたい自分は、極端に他人に近づかれると辛くなるし、こちらからも近づきすぎないようにしている。感情だけで物事を判断する人は苦手だし、やさしさという名でおせっかいを仕掛けてくる人も、他人の目ばかり気にしてああだこうだと取り繕う人も、みんな苦手だ。自分はただ、好きな人と、好きな時間をゆっくり過ごしたいだけなのに。

ライヴに来てくれるお客は大抵、面白かったです!って一言だけ言って帰って行く。嬉しい。そうしたクールで颯爽とした間柄が好きだ。友人とは、よう、って会いたいし、じゃ、また!って感じで別れたい。言葉は何でも、曖昧で良い。ほにゃ、でも、ぶー、でも。嫉妬も下心も捨て去って、さっぱりスッキリ想いを伝え合いたい。きみとの別れ際、自然にやったハイタッチ、お互い思い切り叩いたから快音が辺りに鳴り響いて、手のひらが痺れた。思わず二人して笑った。人生のおけるワンシーンだったと思う。笑顔でさよなら。また会えたらいいね。

時に自分は怖そう、もしくはシャイ、もしくは冷たい奴に見えるらしい。確かにそうした部分はあるかもしれんが、決して冷酷なわけではない。本当の本当はホットな愛を持つ男なのである。好きな娘を笑わしたい一心で裸踊りを余裕でかますし、やさしい人とは穏やかに話の花を咲かせて、か弱い人には温かい味噌汁を与え、目の前にいる人の幸せをささやかに願い、誰かを楽しませることに真剣になって、それでいて自分は悪者になっても傷物になっても仕方無いと考えているような、ジーザス・リスペクトな男なのだ。そして、本当の本当はきっと、一人ぼっちでは何も出来ない男なのだ。

主は私たちに孤独を分け与えたもうた。永遠に一人で戦うつもりです、なんて格好付けるのはよそう。どうせ無理じゃん…。今夜も寂しさをあらゆる言葉で紛らわして、ケチャップでぶちゅぶちゅにかき混ぜる、それじゃ何の解決にもならん、そんなことは随分前から分かっているはずのに。正しさばかり求めるお前はいつも楽しくなさそうだ。ははは、きみ、ちょっと味噌汁でも飲んで落ち着いた方が良いと思うよ。じゃあね。そう言って、あの娘は一足お先にお空に飛び立った。さよなら人類。ぼくも連れてっておくれ。


何もいりません。舞台に来てください。