夜中二時に反社会的なサ店を出たら、雪が降っていた。大阪では珍しい。美しいと思った。積もるほどではないけれど、ぱらつく粉の雪を見て、眠る天使を想像した。もこふわの手袋にかじかむ手を突っ込んで、私は自転車に跨がる。この辺りは繁華街だから夜中でも人が多い。酔っ払って騒ぐサラリーマン、グラサン腕組み仁王立ちの男、携帯で怒鳴るホスト、乳を揺らすギャル、暴れるタクシー、飛び交うゲロ。彼らにもまんべんなく雪は降る。しかし、誰一人として、雪を見つめながらロマンチック~などとは言っていない。いつも通り、深夜の騒がしく腐った光景。明日のことなんか知らないぜ、って感じで、皆が今をスピーディーに生きており、金と酒とドラッグとエロスで夜を突き抜けるだけ。結構結構、良いじゃないですか、私はお先に失礼します、帰宅してホットココアでも飲みますわ。と思ったが、さっきから生足剥き出しの女二人組が邪魔で、自転車が通れない。マジで!きっしょ!ぎゃはは!と大声ではしゃいでいる。何の会話か知らぬが、雪には興味も無さそうである。ちょっと、どいてくれませんかね、とも言えず、女たちの後ろでのろのろと自転車跨がり歩きをする私だ。手袋に雪が少しずつ付着して、綺麗。女たちが、イエーイ、と言って手を挙げた。そしてそのまま、ふらついた、その隙に私は彼女たちの間を自転車ですり抜けた。瞬間、女の片方が、チンポかぶりつく!と叫んだ。何と凶悪で、何と下品な、生き物だ。公衆の面前で叫ぶことか。吐く息白く、私は逃げるように必死で自転車を漕いだ。しばらくして、雪はやんだ。

何もいりません。舞台に来てください。