また会えたらいいね

我が店、ライヴ喫茶 亀が一旦終焉した。そして2019年が終わった。阿呆みたいに笑っていたら、いつの間にか年を越していた。しっかりと風邪をひいて、けれども、そんなことはどうでも良かった。あなたは元気にしてますか。沢蟹のかにくんは、元気です。

最後にひとつ、夢を見た。

約五年の間に、様々なことが通り過ぎた。良い風が吹いた人間もいれば、どん底奈落に落ちた人間もいる。そして、何も変わらぬ人間もいる。自分は、店を始めて良かったと思う。振り返ると、この場所には、ささやかな幸せが星のように集まっていた。時には殺伐として他人を寄せ付けぬ魔窟のような雰囲気もあったが、それでいて、寂しさが少しだけ和らぐような、懐かしい匂いを持つ場所であった(店内は、煙草の臭いと生ゴミ臭さが常にあった)。結局最後までろくに掃除もせず、散らかり放題、帳簿も適当、全てが成り行き任せのままで、欠伸をしていたら何とかなった。ライヴはどれも楽しかった(面白い、面白くないは別として)。

いつか忘れて、また、思い出すときが来ると思う。とりあえずは乾杯。そして私を褒めてください。ヨシヨシと、頭と尻を撫でてください。何だかんだで、立派にやりました。陰気な人見知りの私が店を始めると言って、当初は周りに笑われた。お前じゃ絶対にムリ、と何度言われたことか。確かに、いつまで経っても爽やかな接客は出来なかったが、それでもよくやった方だと思う。

ここは、ビルごと破壊されて更地になる。こればかりは仕方無い。むしろ、大いにぶっ壊して頂きたい。立ち退きの連絡があった当初、自分はこの際何もかもを手放してマンハッハンにでも移住しようかと思っていたのだが、沢山のお客や出演者に、寂しいです、移転して続けてください、と言われて、じゃあそうしよう、と思った。少しは自分も素直になったのかもしれない。

時折noteには思い付きの文章を下書きしていて、先程何となく見返すと、「素直な顔」「素直に」「素直」などと書いてあった。素直ばっかりやないか。内容はどれも、もう少し素直になりたい、やら、素直が一番だ、といったものであった。取り壊しが決まってからの、自分の中におけるテーマだったのだと思う。

さて、移転するにも金が必要で、その資金を何とかせにゃならん。自分は流行りのクラウドファンディングなどには手を出さず、店内に寄付箱を置いた。小銭程度で、大して集まらないだろうと高を括っていたのだが、驚くべきことに、沢山の寄付が集まった。中には店に来るたび毎回入れてくれた人、お札を入れてくれた人、御寄付のぽち袋で入れてくれた人、その日のギャラを全部入れてくれた出演者…。勿論、その他にも沢山の人たちが、亀の移転を願って、寄付してくれた。はっきり言って自分は、泣きそうなくらいに、滅茶苦茶嬉しい。

今現在、次の移転先を探しているのだが、見事移転成功が100だとすると、現状は16くらいである。良い場所がなかなか見つからぬ。資金も、正直に告白すると、まだ足りぬ。どんどんと時間だけが過ぎて行く。しかし焦っても仕方あるまい。こういうときこそ、堂々と現状を楽しみながら、何とか上手くいく方法を編み出していくのだ。

けれども、もう元旦。ギョ!悠長にうどんを食べている場合では無かった。言うてる間に、またひとつ歳を取る。完全なるオッサンへの道。このままだと皆から、あいつマジ無いわ、と愛想を尽かされるのは目に見えている。大丈夫、おれは大丈夫、と言い聞かせつつ、未来を信じて動こうではないか。大丈夫。ふざけていれば、きっとうまくいく。寂しくなったらウォンバットを見に行けば良い。おれたちはいつまでもマトモにはなれぬのだ。

必ず何とかするので、期待していてください。良い報せが出来るように。そんで、また会えたらいいね。サヨナラ!

何もいりません。舞台に来てください。