自分が19歳の暗黒大学生だった頃、エレファントカシマシのライヴを一人で見に行った。確か、なんばHatchだったと思う。アンコールで、宮本がまだ未完成の新曲を弾き語りでやっていて、それが『俺たちの明日』という曲だった。あの曲はキーがEなのだが、そのライヴのときはCだったのを覚えている。つまり、今よりもかなり低い音程で歌っていたのだ。宮本は譜面台でノートのようなものを見ながら、歌詞もつい最近書きました、などと言いながらやっていたが、その内容に自分は驚いた。当時のエレカシは『俺の道』、『扉』、『風』、『町を見下ろす丘』、といった激渋のアルバムをリリースしており、それらは自分の心に阿呆ほど響いた。しかし、CDの売上は低迷を辿り、バンドとしては滅茶苦茶格好良い、刺々しいほどのロックをしていたのだけれども、人気、ヒットチャートの面でいうと、完全に暗黒の時期であった。その中で作った新曲が『俺たちの明日』、それは、さあ!頑張ろうぜ、などというド直球な明るい歌で、今の現状を打破して何か変えようとしている姿がそこにはあった。エレカシまた売れようとしてるな、とそこにいた観客たちも思っただろう。そして実際に、その後エレカシは事務所を変えて、一発目のシングルが『俺たちの明日』、再びヒットチャートに登り詰めるバンドとなったのである。

さて、そのシングルが発売された頃、自分はフランスの田舎町にいた。そうして日本の友達からメールで送られてきた『俺たちの明日』のCDジャケット写真、青空の下でスーツを着る宮本を見て、何か自分もやらなければならぬ、と思った。当時から漫才でライヴやオーディションに出たりはしていたものの、うだつの上がらぬ暗黒な日々を過ごしていた自分は、このまま死ぬのだろうか、などとぼんやり思っていた。冬のフランスは寒くて、そのまま自分は20歳になった。

帰国してから、自分は主催ライヴをやってみようと思い立ち、タイトルを『おれたちの舞台』とした。ちなみに、おれ、と平仮名表記にしているのは、愛読していた筒井康隆の『おれに関する噂』の影響である。ライヴの内容はシンプルで、自分の面白いと思う人たちに今一番面白いネタをひとつ披露してもらう、というものにした。『おれたちの舞台』にはとても思い入れがあって、それにまつわる様々な光景は未だ脳裏に貼り付いている。

『おれたちの舞台』は不定期で開催したが、六回目で一旦終了した。そのときのブログの記事も見つけた。真面目なことを書いている。

その後、何年か経って、別の劇場で二回やり、『おれたちの舞台Ⅷ』を以て再び終了、また何年か後に、ライヴ喫茶 亀で一度番外編として『おれたちの年末』というのをやった。今回は、久しぶりに真正面からやろうと思います。我々もそろそろ、ここらで一発現状を打破しようと思いますので、よろしく。

12月30日(木)
『おれたちの舞台Ⅸ』
@ライヴ喫茶 亀
(大阪市中央区玉造1-3-13)
【出演】
ヤング
関本ぶりき
ライオンズ
阿部崎
Dr.X
山が動く寺岡
フルーツぴ〜ち大将軍
and more…!!
開場18:30/開演19:00
2,000円

何もいりません。舞台に来てください。