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“20年も生きてきたのにね”

 薬師丸ひろ子さんの“メインテーマ”の歌詞だけど、初めてこの曲を聴いた時、私はすでに二十歳を過ぎていて、それでもこの曲の世界は自分の実年齢よりかなり大人びているように感じていた。
 “涙の止め方”を知らないのは、二十歳=大人、ではないってことなのかー?、みたいなことをぼんやり考えながら通学路でチャリンコを漕いでいたような気がする。
 あれから、もう、40年ほどが過ぎて、私は、今、悩んでいる。

 訳あって、定年まで5年を残して早期退職(元々会社都合だけど)した。母の介護と退職までの引継ぎ業務がほぼ同時終了し(これもまた色々あって)、通常の倍以上の忙しさで年末年始を過ごし、さて、これからどうするか、だ。
 もちろん、再就職しなくてはならない。
 制約(主に年齢)が多くて、選べる立場にはない(のはわかっている)。
 だが、現役として働けるのはあと5年だ。
 単に時間を対価と交換するだけで、いいのか、私?
 青臭いけど、“やりたいこと”やった方がいいんじゃない、私?
 やりたいこととできることが違うのは学習し尽くしたよね、40年で、私?
 やりたいことって何?
 仕事で出来ること?
 趣味で出来ること?
 どれも、今悩むことじゃない。定年まで働き続けていれば、退職後は年金とパートで暮らし、後は趣味的なやりたい事に没頭するつもりだった。介護も続くと思っていたし。
 現役で働くはずだった5年は、継続した場合と、再就職する場合とでは、まるで違う。給料も、企業内での立場も、発揮できる能力も(能力の評価は本人には難しいし、誤ってる場合が多いと思うし)。
 そう考えると、色々を割り切って時間を対価に交換することを選ぶべきだ。多分、それが正しい判断なのだ。だが、悩む。5年、その状況に耐えられるか、私? そもそも対価に交換できる時間を、生み出せるのか、私? 確実に、記憶力と理解力は落ちてきている。体力だって当然、ガタ落ちだ。病気ではないという意味での健康ではあるが、疲労の蓄積は尋常ではなく、“突然死するんじゃないか?”という恐怖が頭を離れない。
 そんな状態で、“やりたいこと”を考えても、“出来ること”を考えても、全てがぼんやりしたままで、『とりあえず、今日は早く寝よう。』となる。
 2月中に応募し始めないと4月からの再就職は厳しいと言われている。(ハローワークでも再就職支援の会社からも)
 2月に入ってしまった。
 やりたいことはどれもぼんやりしたままで、更にはどれもお金にならないことばかりだ。
 前から興味があったドローンの講習を受けに行くことだけは決めたのだが、仕事には結び付けられそうにない。じゃあなぜ受講するのか?自分に問いかけるけど、もう、申し込んだから、としか、言えない。年金生活に入ってから趣味にする、と言い訳する。
 最後には、「疲れてるんだよ、死ぬかもって思うほど。」と自分に言い聞かせ、整体へ。もみ返しが酷く、逆にその夜眠れないという泥沼。(翌日以降は回復した。)
 ここ10年くらい、TO DOリストを消していくことで生きてきた。仕事も暮らしも。母の葬儀関連、退職後の事務手続き、リストアップ出来ることは次々に済ませてきた。
 でも、肝心なことが決められず、進められない。
 何がしたいのか、私?
 何なら出来るのか、私?
 60年近くも、生きてきたのにね。
 

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