「日本代表を日本化させる」

今回と同様、W杯で悲惨な結果を招いたジーコ監督のあとを受け、2006年に日本代表の監督になった、イビチャ・オシムの就任会見での有名なひとこと。

まぁ、もし、これを言ったのがオシムでなかったら、

「はいはい、おじいちゃん、ごはんはもうちょっと待ってね」

と言われそうなトコロだが、監督が交代するたびに、その監督の得意とするスタイルに大きく変わり、全く継続性や積み上げがない、ブレまくる日本代表を見かねての発言だったのだろう。

バランス度外視で、惜しげもなくスター選手を並べたジーコに対し、就任直後、どちらかというと、それまであまり注目されていなかった選手を多数招集したオシムを見て、「日本化って、地味化なの?」と思ったモノだが、結局その後、オシム流日本化の完成を見るコトなく、道半ばで岡田監督にバトンタッチし、同監督の超現実路線によるW杯16強のあと、ザッケローニ監督が、今度こそ、日本人の特徴を生かしたサッカーを構築するべく、これまでの4年間の指揮をとった訳である。

おそらくそれは、日本人選手の特徴である俊敏な動きと技術、そして、勤勉さを最大限に活かし、パスで相手を翻弄し、スピードで圧倒するようなスタイルだったと思う。

しかし、今回、あのような結果になると、そのスタイルのツメが甘かったのが、そもそも、その方向自体が間違っていたのかが分からなくなってしまった。

選手達も「自分達のサッカーができれば(勝てた)」とくり返すコトも、そのコトに一層拍車をかけているだろう。

ところで、そもそも、その国のスタイルとか自分達のサッカーとは、ヒトに(しかも、外国人の監督に)指摘されたり、ましてや、考えた末に模索したり構築したりするモノでははずで、どんなに直そうとしても、隠しきれずに、常に"そこ"に存在しているモノだと思うのだが、いかがだろうか?

そして、それは、俊敏性とか器用さとかいった身体的な特徴はもちろんだが、それ以前に、もっと、その国の国民性とか文化とか、そういった精神的な部分の方がよっぽど大きく関与すると思うのだ。

Jリーグが始まった頃、主に南米からきた選手達を中心に、「日本人にはマリーシアが足りない」というコトが盛んに言われた。

マリーシアとは、「ずる賢さ」と訳されたりするが、例えば、大げさに痛がって時間稼ぎをしたり、審判の目を欺いて、ファウルをもらおうといったような行為だろう。

しかし、勝負や試合の場において、そんな文化がない、というか、そもそも、「卑怯」という概念で、そういった行為を最も嫌う日本人にとって、いくらサッカー強国のマネをしても、付け焼き刃感がハンパなく、未だに板についていないコト、この上ないのである。

それでも、さすがにこれはいいんじゃない?と思われる、1点リードで残り時間数分の際の味方同士でのパス交換ですら、どうも腰が据わっていない。

おそらく、ここで露骨な時間稼ぎをするのは、それこそ世界の常識なのだろうが、なんとなく、そんなセコい時間稼ぎをするくらいなら、最後まで精一杯攻めて、それでボールをとられてカウンタを受けたのなら、それはそれでしょうがないというのが、大半の日本人のメンタリティのような気がする。

そう、日本人の根幹は、「正々堂々・真っ向勝負」なのだ。

そして、もし、本当にそうであるならば、どんなにサッカーがウマい他の国の選手にバカにされようと、決して自分達のアイデンティティを恥ずかしがるコトではないはずである。

むしろ、それを躊躇しながら変に他国のマネをしようとするから、サブいコトになるのだ。

また、たとえW杯で惨敗しても、空港で暖かく出迎えるサポータが多いことを見て、もっと選手達を厳しく批判しないと、代表が強くならないと苦々しく言うヒトもいる。

自分自身、ある程度はそうだと思うが、しかし、そもそも、日本人には、どんなにヒドい結果でも、ヒトを足蹴ざまに罵倒したり、生卵トマトを投げつけるような文化はないのだ(某都議の事務所にはあったけど)。

それなら、いっそ、ホントは、こんなコトじゃ強くならないんだけどなぁ……なんて遠慮しながらするのではなく、もっと堂々とすればいいのだ。

(と思っていたら、こんな記事を見て、さすがにこれはちょっとと思ったが)

これらの例は、世界から見ると非常に甘く、つけいる隙だらけに見えるだろう。

また、成績が悪いのに、いつもフェアプレー賞ばかりもらってもしょうがないという意見もあるだろう。

しかし、たとえどんなに青臭くても、遠慮がちに迷いながら他国のマネをするくらいなら、そういった自分自身を受け入れ、それこそ、堂々と自分達のやりたいようにやった方がいい。

そっちの方が、よっぽどストレスも少ないだろうし、本来のチカラが出せるだろう。

という訳で、正々堂々の、なんなら一騎打ちで雌雄を決すべし!という日本人の精神性を最大限に生かし、それを突き詰めたスタイルを構築した場合、果たして、どんなサッカーになるのだろう。

……パワープレイ?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?