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漂着ゴミと、エコとエゴ。

子どもたちと磯遊びをするときやサンセットを愛でてるときカヤックなどで海遊びをするときも目につく海のゴミ。海辺を歩く際にはできるだけ回収袋を持参して集めるようにしてはいるものの、集めても集めてもなくならないのはその多くが、沿岸域の生活ゴミではなく「漂着するゴミ」だからです。

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東シナ海に面した地形で、異国のゴミも漂着する天草西海岸の浜辺は、私たちが今すぐに直視しなければならない地球の現実を教えてくれます。

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ゴミ回収すればいいってわけじゃない。
捨てなければいいってわけでもない。

もっとその先のことや
もっとその手前のことを
自分ごととして考える材料がほしい。

そんなことを思うようになり、過日、プラゴミ をマテリアル化している工場へ学びに行きました。そこで見た現実は、あまりにも考えさせられることがいっぱいで、普通のことを発信することもできなくなりました。

やわな自分を認めたり、叱咤激励するために、あえて都市の日常と、手つかずの自然のなかに身をおくことを繰り返し、考えること2週間。だいぶ消化に時間がかかりましたが、考えるだけじゃもったいないので、忘れないうちに、ここに記しておこうと思います。

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生産や流通の現場を支え、消費者の日常を支える、暮らしのなかのプラスチック包装容器。食に簡便さを求めるライフスタイルを送る人が増え、食の安全や衛生意識の高まり、長期保存の必要性が声高にいわれるほどに、プラスチックはなくてはならない素材になりました。

プラスチックは使い捨て容器として認識されることが多いけど、実際は日々の暮らしのなかに、再資源化するための仕組みがあります。それが、「分別」です。分別のしかたや分類は自治体によって異なりますが、自治体ごとの基準にそって家庭から回収された「プラスチック製容器包装」は、全国のリサイクル拠点で適切な処理を施され、その多くが再資源化されています。

今回訪ねたのは、熊本市南区の「エコポート九州」。熊本港そばというアクセスの良さを生かした九州最大級のリサイクル拠点です。ここでは、熊本県や大分県などの各自治体で集められたプラスチック製容器包装や、木質系廃材・林地残材などを有効活用した再試原価の取り組みが行われています。

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「プラスチック」として認識されている容器包装。それらはすべてまとめて溶かして再生されるものだとばかり思っていましたが、実はそうではありませんでした。プラマークをよく見ると、PEやPA、PP、PSなど、用いられている原材料がわかる表示が添えられています。

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それぞれの材質による特性について、参考になるサイトはこちらhttp://www.osk163.com/info/


再資源化するにあたってもっとも重要なのが、この材質を適切にえり分けること。これにより、エコポート九州では回収されたプラスチック製容器包装の90%以上が再資源化されています。

その工程を見てみましょう。

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大きな塊として各自治体から寄せられた回収物は、工場で荷ほどきされ、袋を開けて、ベルトコンベアーで機械に取り込まれ、ロールスクリーンという手法によって重量や大きさ別に選別されます。

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重いもの、軽いものに仕分けされたあと、それぞれに機械や人の手でプラスチック以外の混入物を取り除く工程があるのですが、回収されたもののなかから見つかった異物のコーナーを見てゾッとしました。

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乾電池や、電気コードや、瓶や、アルミ製品、さらには、「包丁」や「ナイフ」といった刃物なども複数。電子タバコが普及して、外側がプラスチックに見えるためかそのまま回収されているものも多いらしく全国的にはあの中にあるリチウム電池が爆発する事故なども実際に起こっているそうです。

機械だけでなく、人の手による選別も必要なのは、こうしたことを未然に防ぐためのもの。ひとりひとりが容器を開けて捨てる際、ほんの数秒意識を向けて然るべき処理を行うだけで、なくてもよくなるリスクや工程です。国や自治体が処理費用を払っていることを考えると、めぐりめぐって税金使途にもつながるわけで、正真正銘の自分ごと。しっかりわが身を振り返りつつ、子どもたちにも共有したい点のひとつだと思いました。

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こうして適切に選別されたプラスチックは、大きく分けて2種類に分類されます。資源再生できるプラスチックと、燃料として再生される廃プラスチックです。そのうち再生できるプラスチックは、循環型経済の先進地として知られるフランスから導入された最先端の光学機械(※)にかけられます。
(※機械自体は撮影不可のため、分別されたあとの写真を紹介します)
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  PP(ポリプロピレン)
  PE(ポリエチレン)
  PS(ポリスチレン)

と、素材ごとに細かく仕分けたプラスチック容器包装はそれぞれに、粉砕・洗浄されたのち、100℃の熱で減容(容積を少なくすること)されて、再利用のしやすいペレット状に加工されます。

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PSペレット↓

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◉PPペレット↓

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◉PEペレット↓

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PPペレットは、ハンガーや植木鉢、医療用のゴミ箱などに
PSペレットは、断熱材やオーディオ製品、OA機器などに
PEペレットは、ポリ袋や建材などに。
それぞれの加工工場で原材料として用いられ、再生されています。


さらに、再生できない複合原料のプラスチック容器包装や、ファイルなどの溶け残りは、こちらでは「廃プラスチック類」として分別されています。これらは、木くずや紙くずなどと合わせて処理が施され、「RPF」という名の固形燃料となり、石炭などの代替燃料として用いられます。

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畳や木屑などが多いと、その原材料の色になるというのが興味深いです。こうして作られた「RPG」は、石炭に比べて二酸化炭素の排出量が低いので、八代の製紙工場などでも用いられているそうです。


最先端の技術や人の手、工夫を取り入れることでこの施設では、容器包装として用いられ、回収されているプラスチックの90%以上が再資源化されていました。


また、「エコポート九州」では、処理施設の屋根の上にたくさんの太陽光パネルが配されているほか、シンボルタワーでもある風力発電なども行われています。再資源化にかかるエネルギーのすべてをまかなえるほどの発電量は今のところはまだないそうですが、太陽光発電や風力発電のために山の木が大量に伐採されて、森林資源や自然災害の誘発などが問題視されている昨今でもあり、こうした屋根上発電等、敷地をフルに活用したエネルギー循環の取り組みも、とても興味深いものだと思います。

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この工場での学びは、消費者としても、生産者を応援したい立場としても、すごい!と思うものばかりでした。でも、帰ってきて、考えれば考えるほどに、すごいけど、このままでいいのかな?とも思うようになりました。

再生されるプラスチックは、再生することはできても、今の私が知る限り、自然に還ることはできないようです。

団塊ジュニア世代にギリギリ分類される私。子ども時代を振り返ると、肉は肉屋で経木に包まれ、魚は行商のおばあちゃんから玄関先で受け取って、豆腐はボウルを持参し、豆腐屋で。泥つきの野菜や土手の野草をいただくのだって当たり前。そんな環境で育ってきたのに。いま、わが子に伝えているのは、全然違う日常です。

食材がうまれる場所と、食材を調理する場所と、食事をいただく場所が、遠ざかっていくほどに、包むものの果たすべき機能が追加されていくってどうなんだろう。文明とは「世の中が進み、精神的・物質的に生活が豊かである状態」のことを言うそうですが、本当の豊かさってなんだろう?人間だけの都合でいいのかな?地球を置き去りにした豊かさは、絵空事な気がしています。

   考えつづけたい
   エコと、エゴ。

一度手にした「簡便さ」を「手放す」ことは、容易ではないかもしれないけれど。産地と消費地の分断の見直しや、遠ざかった距離を縮めていくこと。ハイテク、ローテク両面の力を借りること。働きかたや暮らしかたを見直すことなども必要だから、一足飛びにはできないものもあるけれど。

わが子の10年後、20年後を思えば思うほど
もっと本気で、「手放す」ことを考えたいと
強く、強く、思うこの頃です。


※漁師さんたちが回収している海の漂着ゴミ等は、一般ゴミではなく産業ゴミ分類されるため、産業廃棄物処理されています。






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