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いい女

「二千七百の夏と冬」上下 荻原浩

北関東のダム建設予定地で、縄文人の古人骨が発見された。推定される年齢は10代半ば、性別は男性。新聞記者の佐藤香椰は、この発見を連載企画にできないか検討を始め、発掘を進める地元の国立大学准教授・松野から情報を集めていく。やがて、古人骨は約2,700年前のもので、縄文人の古人骨のすぐ隣に同じく10代半ばの女性と推定される渡来系弥生人の古人骨も発見された。
そして物語の主人公は、古人骨として発見された縄文人、15歳の少年ウルク。ピナイと呼ばれる村の集落で狩猟採集をする部族のひとりとして生きるウルクの、一人前の男として認められたいという冒険と成長。ピナイとはまったく異なった様式の共同体を営む人びととの出会いを通じて知る世界と、渡来系弥生人のカヒィとの愛の物語。

あっおぅ‼️ロマンだなあ〜〜‼️
山田風太郎賞を受賞しているんですね。古代のお話…ということで、今まで何度か手に取り、後回しにしていましたが、いやいや読んで良かった❗️荻原浩さんにハズレなしです。これ、映像化して欲しいなあ〜〜。
物語は、現代と古代を行き来しますが、ほとんどは古代です。
私はラスト5行で涙が滲みました🥲(涙もろいのです)

2,700年前が本当の本当にどうだったか?というのは誰にも分からないことだけれど、今作での描かれ方は、かなりリアリティを感じます。と共に、とても面白いのが“言葉“ 。
これから読む方にはお楽しみでもあるので、あまりネタバレしませんが、たとえば、犬がヌー、兎がミミナガ、など(ちなみに、これはとても分かりやすい例)に始まり、食べ物や植物、色々なモノの名前が出てきて、「う〜〜ん、これは何のことだろう?」と考え考え読むのも面白かったです。

そうそう、ちょっと前に、FBで「Gパン」と文の中で書いたら、お友達から「今どき珍しい」と言われ😅「ジーンズ」…いや最近は「デニム」と言う〜なんて話もあったけど、こんなに短いスパンでも言葉ってどんどん変わるんだから、そりゃあ2,700年も経ったら、同じ言葉の方が凄い!って感じですよね。

上巻は少し時間かかりましたが、下巻はもう止まらず‼️
特に、クマとの戦いのあたりからは、ノンストップでした。
もちろん、本の後ろに参考文献はいっぱいありましたが、まさに『骨は語る』であり、骨から、これだけの発想で紡がれる物語。圧倒的な面白さ‼️さすがだなあ、荻原浩さん❗️

印象に残ったところを少し。
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一人の人間が、生まれてから死ぬまでの人生の長さを、まあ天寿を全うしたとして、仮に九十年としましょうか。これを二倍にしただけで、もう江戸時代になる。五倍で戦国時代。十倍なら平安時代だな。つまり、人が人生を三十回くらい繰り返せば、二千七百年くらいになっちゃうんですよ。

すべてを知ろうとしてはならない。悪しき精霊は、なにもかもを知り、すべてを得ようとする者の心に忍び寄る。だが、ウルクは知りたかった。すべてを。

命令や役目を何も与えられず、めざすところもわからず、寒さや空腹や渇きに追い立てられることもなく、大切なことに分別を働かせるのは、思っているよりも難しいことだった。自分で考える。自分で決める。自分で自分を動かす。

ピナイの人々は、常に神が自分たちを見守っていると思いこんでいるのだろうが、世界がとてつもなく広いことを知ったウルクには、神々がちっぽけな人間ひとりひとりをきちんと見届けているとは思えなかった。

歴史をつくっているのは国家や政治や経済じゃない。歴史は恋がつくっているのだ。

何の努力もせずに手に入れられる戸籍を誇ったって、自分自身は一センチも前に進めない。
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