糖質を含む栄養素が消化吸収される場所はどこ?
三大栄養素は炭水化物・タンパク質・脂質
糖質と食物繊維を合わせて炭水化物と呼びますが、ここでは糖質に着目して説明していきます。
結論としては、この3つは食品として口腔に入り、食道・胃・腸による消化を経ます。
腸の中で、「管内消化」「膜消化」という2つの段階を踏んで小腸の上皮で吸収されます。管内消化とは、消化液の中の酵素で小腸の管の中で進む消化のことです。膜消化とは、小腸表面の微絨毛の上皮細胞膜に含まれる酵素が行う消化のことです。
糖質が消化吸収される部位
消化される前のもの
消化液が分泌される部位
消化酵素の名称
分解されて生成されるもの
スクラーゼ
ブドウ糖、フルクトース(果糖)
糖質は酵素により分解され、最終的に小腸上皮でブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)などの単糖に分解され、吸収されます。
糖質は最終的に単糖になり、小腸粘膜上皮細胞で能動輸送されることで血管に取り込まれていきます。
タンパク質が消化吸収される部位
消化される前のもの
消化液が分泌される部位
消化酵素の名称
分解されて生成されるもの
タンパク質
胃
ペプシン
ペプトン
タンパク質、ペプトン
膵臓
トリプシン
ポリペプチド、アミノ酸
ポリペプチド
小腸
アミノペプチダーゼ
アミノ酸
タンパク質は、ペプシンなどの酵素により分解され、小腸上皮から吸収されます。タンパク質は最終的にアミノ酸になり、小腸粘膜上皮細胞で能動輸送されることで血管に取り込まれていきます。
脂質が消化吸収される部位
消化される前のもの
消化液が分泌される部位
消化酵素の名称
分解されて生成されるもの
脂肪
口、胃、膵臓、小腸
リパーゼ
脂肪酸、グリセリン
脂肪(中性脂肪=トリグリセリド)は、その3分の2に胆のうからの胆汁酸が加えられて吸収されます。
残りの3分の1はリパーゼによって消化されて、門脈の血中に移行します。
糖質の吸収速度で何が変わる?
糖質は体内に入ると即効性のエネルギー源になります。
しかし、運動をする習慣がない人はエネルギーを全く摂らなくていいわけではありません。人体は毎日毎秒、心臓を動かしたり呼吸したり体温を調節したり代謝をするだけで、寝ていてもエネルギーを消費しています。
このために最低限のエネルギーは摂取しつつ中身となる栄養素や食べる順番を変えることでダイエットをしていくのが健康なダイエットに欠かせません。
小腸で糖質が吸収されると血糖値が上がる
前の章の表をおさらいすると、食品に含まれる糖類は糖類がたくさん結合した多糖類の状態で存在しています。
多糖類は唾液に含まれるアミラーゼという酵素によりマルトース・ラクトース・スクロースと呼ばれる二糖類に分解されます。その後、さらに細かく、グルコース、ガラクトース、フルクトースと呼ばれる単糖類に分解され、小腸から吸収されます。
吸収速度の違いまとめ
糖質<タンパク質<脂質 の順で消化に時間がかかります。
つまり糖質は吸収されやすいのです。
スポーツ選手がおにぎり、お饅頭、果物などを試合中に食べているのも、すぐにエネルギーを使わなければいけないためですね。
糖質が吸収されるとインスリンが分泌される
さて、ここまで見てきたことから糖質は非常に吸収速度が速い栄養素であることがご理解いただけたと思います。
食事により小腸から吸収された糖質が血糖値を上げると、血糖値を下げて安定させるために膵臓のランゲルハンス島β細胞から血液中に「インスリン」が分泌されます。
以下の表に、膵臓から分泌されるホルモンの種類をまとめました。
分泌される場所
ホルモンの名前
作用
A(α)細胞
グルカゴン
肝グリコーゲン分解、血糖上昇
B(β)細胞
インスリン
グリコーゲン・脂肪・タンパクの合成、血糖低下
D(δ)細胞
ソマトスタチン
インスリンやグルカゴンの分泌を抑制する
すこし詳しく説明すると、生き物の体は常に生命を維持するために、体内のホメオスタシス(恒常性)を保つために様々なホルモンを分泌しています。ホルモンの分泌をコントロールする機構には、ネガティヴ・フィードバックとポジティヴ・フィードバックの2つがあります。
血糖値を一定に保つ恒常性を維持するはたらきはネガティヴ・フィードバックです。
糖を摂取して血糖値が上がると、必要以上の栄養は非常時のために体に蓄えておく働きをするのが膵臓です。
インスリンの働き
膵臓はインスリンを使って、血液中の糖質からグリコーゲンを合成し、これを肝臓に貯蔵します。
このため、食後2時間経つと血糖値は空腹時の値に戻ると言われています。健康診断の日に「朝ご飯を食べたのは何時ですか?」と聞かれるのはこのためですね。
グルカゴンの働き
逆に血糖値が低くなってきたときは、膵臓は逆の働きをするグルカゴンで肝臓に貯蔵しておいたグリコーゲンを分解し、血糖を上昇させます。
このホメオスタシスのはたらきで、人体は常に安定した食事をとることができなく厳しい環境でも、自らの体内でエネルギーの貯蔵と分解を行い身体機能を維持することができるのです。
【注意】
また血糖値は食事だけでなく、ストレス・下垂体ホルモン・副腎皮質ステロイドホルモンなどの影響を受けます。そのため、値自体は様々な影響を考慮しないといけません。
インスリンは糖を脂肪に変えて体に蓄積してしまう
では、糖質が貯蔵されることと肥満には一体どのような関係があるのでしょうか。
血糖値を下げるために膵臓から放出されたインスリンは、過剰な糖質をグリコーゲンに合成するだけでなく中性脂肪への合成も促進してしまうのです。
脂身の多いお肉を避けてご飯やお菓子を食べていても太ってしまうのは、インスリンの働きが原因です。
食事が不十分だった時期を人類が乗り越えられたホメオスタシス機能のおかげで、現代のダイエットには身体の側から安全ロックが何重にもかかっている状態だとイメージしてください。急激な血糖値の上昇には多量のインスリンが分泌されます。自動車運転で速度違反をすると、超過した速度に応じて違反点数や罰金が上がりますよね。それと同じように、糖質の吸収速度が速いほど大量のインスリンが分泌されます。
インスリンの分泌を抑えるには、「食べ方」と「食品の種類」の両面からアプローチすることができます。
これらは「低インスリンダイエット」「低GI値ダイエット」「糖質制限ダイエット」など様々な名前で呼ばれており、糖質の制限も緩いものから厳しいものまでさまざまです。低GI値のGIとはGlycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食後血糖値の上昇度を示す指標です。GIが低い食品ほど、インスリンが分泌されにくく肥満になりにくいと考えることができます。
これを一人前の食べる量で数量化したGL値もあります。どちらで表示されていても、数値が低い方が太りにくい食材、と考えてください。まずは「食べ方」からチェックしていきましょう。
糖質の吸収速度を抑える食べ方・食べ順とは
糖質の吸収を抑えたい、とは言っても習慣や好みは急に変えられるものではありません。定食や麺類、サンドイッチなど、外食で選びがちなメニューは特に、肉、魚、野菜と比べて割安な糖質(米、麺、パン)で量を増やして提供しています。
それでも一人で食べるのであれば、少し行儀が悪くても糖質をできるだけ摂らない生活をすることはできるでしょう。しかし、家族や友人、上司や後輩、同僚、取引先などとの食事では特定のメニューを避けることは難しい場面がほとんどです。それによほど親しくない限り、あの人って体型を気にしているんだ、と思われることも避けたいですよね。
この章では「食べる内容」ではなく「食べ方」で糖質の吸収速度を抑える方法を紹介します。
「野菜から食べるのはもう古い」?正解は
10年以上前から女性誌で特集されていた、献立の中でも野菜を最初に食べる方法が、最近はベジファーストと呼ばれています。
ベジファースト?ミートファースト、どちらがいい?
結論としては、野菜や肉類・魚介類の種類にもよるし、調理法・味付けにもよります。野菜といえども、トウモロコシやジャガイモ、サツマイモ、かぼちゃなど、あとで詳しく説明しますが糖質量が多い食材を先に食べてしまっては一気に血糖値が上がります。
肉類・魚介類も同じです。ウインナーやベーコンなどの加工肉製品、みりん干しやはんぺん、かまぼこといった加工された魚製品は糖質量が多いので血糖値の上昇を抑える食べ方とはいえません。
調理法・味付けも大きく左右します。みりんを使った煮物や炒め物は糖質が増えますし、ソースやケチャップに含まれる砂糖が多ければ、野菜や肉さえ先に食べたから大丈夫、ではありません。汁物を先に、とも言われますが、それがコーンポタージュやポテトのビシソワーズだったらやはり急激な血糖値の上昇を避けることは難しいでしょう。
糖質を最後に
つまり、大切なのはカーボラスト=糖質をあとに、ということ。
野菜を先に、肉類・魚介類を先に、汁物を先に、いずれも正解とも言えますがそれだけでは不十分です。「糖質の多いものは後回しにする」が正解です。
よく噛んでゆっくり食べる
子供のころ、給食の時間にも「一口20回噛みましょう」などと言われませんでしたか。
実は噛む動きで脳内にヒスタミンが分泌されます。脳の視床下部にあるヒスタミン神経は、食事、引水、体温調節、睡眠サイクル、神経内分泌などさまざまな機能に関与しています。
そのなかでも血糖上昇作用、脳でのグリコーゲン分解・代謝に深くかかわっており、咀嚼(噛むこと)の回数を増やすと満腹を感じることは、実証されています。
ただの言い伝えではなく、実際によく噛むことで食欲が抑えられ、食べすぎを防ぐことができるのです。コースメニューのように食べる順番を選べない時も、「よく噛んでゆっくり食べる」だけは実践できますね。
三食わけて食べることも大事
「朝は時間がなくて昼と夜だけ食べる」
「夕飯は太るって聞いたから朝と昼しか食べない」
忙しい現代社会を生きる人は、なかなか一日三食食べることは難しいかもしれません。
でも、ちょっと思い出してください。急激な血糖値の上昇が多量のインスリン分泌につながるのです。
つまり、食べないでいた時間が長いだけ、その次の食事のあとに血糖値が急上昇しやすくなってしまいます。忙しかったりお腹がすいていなくても、できれば時間を空けすぎずに三食しっかり食べることで血糖値をコントロールできたらよいでしょう。
糖質の吸収をおだやかにする食事のポイント
糖質の吸収をおだやかにする食べ方をまとめると以下の3つのポイントが分かりました。
糖質の多いものは後回しにする
よく噛んでゆっくり食べる
できれば時間を空けすぎずに三食しっかり食べる
最後に、糖質の吸収を抑える食品の選び方を見ていきましょう。
糖質吸収を抑える食品まとめ
すベジファースト?ミートファースト?の章でも触れましたが、野菜や肉であれば食後血糖値が上がりにくいとは単純には言い切れません。
種類や調理法によってもGI値は異なるからです。
私たちが様々な日常の食品のGI値をまとめたページを以下に記載します。その日の食べたい気分や、季節の食材、作りたいレシピから探してみてください。
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そして、摂取する量によっては決して無視はできません。
この記事では糖質が多い調味料と少ない調味料を紹介します。
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糖質制限中であっても野菜は健康的なイメージがあり、気にせずに食べている方も多いでしょう。しかし、野菜のなかにも糖質が多いものと少ないものがあります。
また、果物もケーキなどのお菓子に比べると健康的なイメージがありますが、野菜同様に糖質量は種類によって変わってきます。