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各種感想・考察文

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既存作品の感想や考察など。 作品の形態やジャンルはいろいろ。
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#読書感想文

「ここは今から倫理です。」12話への雑感

 雨瀬シオリ著「ここは今から倫理です。」12話に出てきた、倫理問題について、あれこれ考えます。 ■問題文  問題文は、以下のとおり。 「あなたはとある夫婦の家の隣に住んでいる」 「そこの夫は妻に酷い暴力を振るう人で」 「ある日その妻が、ボロボロの姿で、助けを求め、飛び込んできた」 「その後、その夫もやってきた」 「『俺の妻がここに来なかったか』」 「・・・さて、この時貴方は妻を、隠し通すか、夫の元に帰すか」 「夫は『見つからなければ警察に届け出る』という。  このまま匿い

宮部みゆき『ペテロの葬列』読後雑感

 宮部みゆきは、人物の内面描写に定評のある作家で、私の大好きな作家のうちの一人です。  代表作を問われたならば、今なら「三島屋シリーズ」が真っ先に上がるでしょうか。20年程前に書かれた『模倣犯』も評価の高い作品です(映画は酷評されましたが、それは原作のせいではありません)。  今回俎上にあげる『ペテロの葬列』は今から10年近く前の作品です。ドラマ化もされているそうですが、そちらは私は見ていません。杉村三郎という男性を主人公にした作品群の一つですが、その中でもこの『ペテロの葬列

夢野久作「瓶詰地獄」考察②

 夢野久作「瓶詰地獄」の考察を綴ってます。  今回は、各手紙を組み合わせつつ、いろいろ考えます。  ネタバレあります。  よければ青空文庫あたりで、まず、お読みください。短い小説です。 ■3つの瓶詰手紙が見つかった場所  3つの樹脂封蝋の麦酒瓶は、3つとも封蝋が為されたまま、同時に回収されています。  1つは砂に埋まっており、1つは岩の間に挟まっており、1つはどういう見つかり方をしたか不明です。  で、私ここで、ちょっと大胆な仮説を立てます。それは。 「二人が流れ着いた

夢野久作「瓶詰地獄」考察①

 夢野久作の「瓶詰地獄」について、綴ります。  複数の手紙を並べてあるという構成の短編です。未読の方で、興味がおありの方は、青空文庫にテキストがありますので、お読みください。  この作品は、背景を説明してくれないタイプの作品で、解釈が多数存在します。しかも、そのいずれもが「でもやっぱり、スッキリしない点が残る」という具合。だからこそ読者の心を捉えて放さないのでしょう。  読後感想を兼ね、考察を綴ります。  まずは、最初から順番に第一印象の感想を綴り、それから、細かい考察に