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かわいいの基準

東京の女子大に通っていた時のこと。自由が丘のとあるショップのオリジナルトレーナーがクラスで流行ったことがあった。動物の名前とイラストを頭文字でアルファベット順に色々作ってあるものだった。KはカンガルーとかBはベアーとかそんなん。

週末にクラスの友人に誘われてショップに行き、それぞれが気に入った動物のトレーナーを買った。割といい値段がしたような記憶だけれど、友人とお揃いというのも楽しいしクラスのみんなも買うようなことを言っていたからちょっとウキウキしていた。

月曜日の授業にそのトレーナーを着て行った私を見て、いきなりクミとミキに大きな声でケラケラと笑われ、私はちょっとわけがわからなかった。彼女たちも同じトレーナーを着ている。ケラケラの笑い声の次にこんなことを言われた

”シマは絶対そのトレーナーを選ぶと思ってた!だって誰もそんなの選ばないけど、シマなら選ぶと思ったのよ!”

私が買ったのはイグアナのイラストが胸に大きくプリントしてあるものだった。

彼女たちに何と返答したのか覚えていないが、なぜそんなことを言われたのかが全くわからず、怒りよりも疑問の方がたくさん湧いてきた。

何で私がこれを選ぶと思ったのだろう、陰でどんな会話があったのだろう。誰も選ばないものを私が選ぶと思った根拠は何なのだろう、そう思わせたのはなぜだろう。

彼女たちの基準ではイグアナのトレーナーは18歳のかわいい女子が選ぶものではないというのはわかった。はっきり言うとイグアナはかわいくないという位置付けなのもわかった。同じテニスのサークルで仲が良いと思っていたのにこの発言はどうなのだろう。馬鹿にされてる気がする。

嫌な気持ちがしたのでそのトレーナーはもう着ないことも出来たが、私はこのとぼけたイグアナのイラストが可愛いと思っていたので、着てくるたびにクスクス笑われるのを無視してわざとヘビロテしていた。

彼女たちは美人でおしゃれでお金持ちだけれど、嫌味で嫉妬深く人を蔑むことが平気な”かわいい”女子大生だった。他の子よりも自分が可愛い、自分が上だ、自分が優ってると確認しないとやってけない人生だったのだろう。

しばらく後にクミが憧れている竹内先輩(男)が同じイグアナのトレーナーを来てテニスの練習に来た。

”よぉ、シマリス!俺もイグアナの買ったんだ〜可愛いよな〜!お揃いだな!イグアナがあの中で一番可愛かったよな!”

ニコニコと笑う先輩の後ろに口をひん曲げて鼻に皺を寄せている可愛くない女子が見えてちょっと笑った。

シマフィー 



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