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【立替経費】インボイス制度下での原則と書類交付が省略できる場合


こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

ひとり社長であっても、従業員が何百人いても、個人が会社の経費を立て替えることはあるかと思います。

あとは、他社に自社の経費を立て替えてもらうこともあるはずです。

インボイス制度において、他社に立て替えてもらった経費に紐づく消費税を、自社の納税額の計算において控除(仕入税額控除)するためには、一工夫必要になります。

ただ、書類の交付が省略できるケースもあるので、無駄な書類をかき集めないように取扱いを整理しておきましょう。

原則はインボイスの写し+立替金精算書が必要

まずはインボイス制度下で経費を立て替えてもらった場合の原則的な取扱いからお話していきます。

A社が経費を負担する自社、B社が立て替えて払ってくれる他社、C社が料金の受領者(商品サービスの供給者)とします。

たとえば、電力会社であるC社がテナントオーナーのB社にインボイスを発行するけれども、最終的な経費(電気料金)負担はテナントのA社である場合を当てはめてみましょう。

そうすると、この図のようになります。

本来、A社が経費とともに支払った消費税を仕入税額控除の対象にするためには、C社からA社宛のインボイスを貰う必要があります。

が、この場合は貰えないので、B社からB社宛のインボイスと立替金精算書を貰うことになります。

立替金精算書の様式は決められていませんが、インボイス(適格請求書)の記載事項に加えて、以下の内容が記載されていれば問題ないと思われます。

  • 立替金精算書の発行先の名称(上記の場合はA社)

  • 立替払いをした会社の名称(上記の場合はB社)

  • 立替払いをした日

  • 立替払いの金額、消費税額(複数者で按分する場合)

ちなみに、この取扱いは従業員が会社の経費を立替払いした場合も同じです(次に説明するインボイスの交付が免除される経費は別です)。

書類の交付が省略できる場合

ここまでは立て替えてもらった経費を仕入税額控除の対象にするための原則的なルールをお伝えしましたが、場合によっては、立替払いをした会社や従業員からインボイスや立替金精算書の交付を受けなくて済むケースがあります。

インボイスの交付義務が免除される取引の場合

そもそも、インボイスがなくても仕入税額控除ができる取引があります。

たくさんあるのですが、たとえば、領収書をもらえないような公共交通機関や自販機での買い物の支払いがそうです。

そして特に、今回のテーマに関係があるのは、従業員に支給する出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)です。

これらの取引に該当する場合は、インボイスがなくても帳簿への記載と保存のみで仕入税額控除が認められますので、インボイスや立替金精算書は不要になります。

適格簡易請求書の対象取引の場合

小売業や飲食業、タクシー業などは不特定多数の人が利用するので、インボイス(適格請求書)に代えて、簡易インボイス(適格簡易請求書)の交付ができます。

簡易インボイス(適格簡易請求書)は、インボイス(適格請求書)の記載事項のうち、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要になるものです。

なので、上の例でC社がタクシー業だとすると、C社から交付される請求書にはA社やB社の名称は書いていないので、B社からA社にそのまま簡易インボイス(適格簡易請求書)を横流しすれば、A社は仕入税額控除をすることができます。

要は、別途立替金精算書を作成して交付する必要がないということです。

インボイスの写しが大量に必要になる場合

先ほど紹介した原則では、B社はA社に対して、インボイスの写しを交付しなければいけませんでした。

が、B社が立替払いをした請求先が多数ある場合は、B社の事務負担を考慮して、B社は立替金請求書のみを各請求先(経費負担をする事業者)に交付しインボイスを自社で保存しておけば、各請求先(経費負担をする事業者)は仕入税額控除を行うことができます。

ただし、各請求先(経費負担をする事業者)に対しては、C社がインボイス登録事業者なのかどうかを、分かるようにしておく必要があります。

2割特例や簡易課税制度を選択している場合

これらの計算方法では、相手にいくら消費税を払ったか、そして払った消費税が仕入税額控除の対象になるかの確認をしなくてもいいので、そもそも、もらう請求書がインボイスである必要がありません。

もちろん立替経費であっても、インボイスを入手して保存しておく必要はありませんし、立替金精算書の入手も不要です。

なので、この場合は、経費を立て替え払いする従業員に対して、「インボイス登録しているお店でしか経費を使ったらダメ」というお達しをしなくて大丈夫ということになります。

なお、消費税(インボイス制度)と経費の話がごちゃごちゃになる方はこちらの記事をご参照いただければと思います。

少額特例の適用を受ける場合

2期前の年間売上が1億円以下、若しくは、1期前の前半半年の売上が5,000万円以下の事業者は、税込1万円の仕入れはインボイスがなくても仕入税額控除の適用を受けることができます。

なので、この条件に当てはまる立替経費の場合は、帳簿への記載と保存のみでOKということになります。

インボイスや立替金精算書は不要です。

まとめ

ご覧になっていただいたように、立替経費の論点ひとつとっても、ケースによって処理の方法が複数あります。

これは自社の売上規模や、取引内容で違ってくるので、自社にとって一番適切なルールを作るのが難しいケースがあるかと思います。

そういう場合は、下記のLINEにご登録いただき、ご質問を送っていただければと思います。


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