立体視

妙な立体の造形の街を闊歩する
あれはネオン
あれは看板
あれは錆びた自転車
あれは見捨てられた換気扇
潔いほどの人口は却って遠い昔話
少し騒がしく思った時にゃ
はなれてみるのもいいもんさ

路地裏あたりがちょうどいい
苔や蜘蛛などは放っておいて
どうだい、一人で隠れんぼ

やっと着いた場所だって
いくら大切なものだって
何れ何処かに埋まっちまって
掘り出されるに相違ない
資料や何かと箱に入って
未来の浪漫になるのだろうさ
顕微鏡でジロジロ見られ
たまに解剖されたりして…

けれど今は、個人の世界
誰かの見る世界は誰かの傍らにある
そう、これらは不完全形を完成とする玩具 パズル
幾つでも重ねて、無くして
まわってまわってくりかえしくりかえし

そうだ
此処は巨人の腹だ、透明の胃袋だ
もしくは完全変態する
蛹の内側の姿だ

光の滲むのは
近視のせいだけではあるまい

(2020年第58回有島青少年文芸作品集掲載)
2024/01/08noteにて再掲

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