"きらり"とした日々は、常に、ここに【しまさんの読むRadio】
最近、夜長ですね。日の入りが早く、日の出が短い。
ぼくは、夜という時間がすごく好きです。こうやって、noteを書く、落ち着く時間であり、集中できる時間であり。
いつも、家に帰って、風呂に入って、ストレッチをしているのですが、ウォークマンをシャッフル再生していて、「これは…!」とストレッチを中断してメモをした曲の話をしたい。
藤井風「きらり」の歌詞の意味にある「オモテ」「ウラ」
それは、藤井風さんの「きらり」だ。
ひとまず1回聞いてほしい、そのうえで読み進めてみると、「あ、こういうことなんだ」ってわかる(気がする)。
結論から言うと、「こんなにおしゃれなポップソングなのに、言ってることが悟りを開いている」という点に、驚かされた、という話である。
「おしゃれ」なのは、もしかしたら、「藤井風」という人物が語っている(歌っている)からだし、PVの雰囲気がおしゃれなスポーツカーのPVのような雰囲気を醸しだしているから、というだけなのかもしれない。
事実、HONDAのVEZELという車のPVのために書き下ろしているのだから、そりゃそうなんだけど。
なのに、歌詞の内容が、一級品のロックミュージック感があるし、なんならこれは「仏教の悟り」にさえ近い内容では?という感じなのだ。表面上はラブソングの体裁をとっているにもかかわらず。
"荒れ狂う季節の中も 群衆の中も"
ラブソングの体裁をとっている、のは
荒れ狂う季節の中も 群衆の中も
君とならば さらり さらり
新しい日々も つたない過去も 全てがきらり
という表現に現れていて、いうなれば「交際して少し経っていて、気が付いたこと、心が離れてる君に言いたいこと」のような体裁に聞こえるので、そう思っただけで、これは別に「恋人」でさえなくてもいいのだけれども。
もしかして…と思ったのは、これって仏様の教え、もっと詰めると「他力本願」的な意味も含まれている?と。
”荒れ狂う季節”が、まさに目の前何が起こるかわからない世界のことを指していて、”群衆の中”という表現がいろんな人にいろんなことを言われたり指さされたり、という意味でとらえるとしたら、なんと仏教的な歌詞だろう?と思った。
そんな世界でも、「君(=仏様、阿弥陀様)と一緒ならば、さらりと(つまり気にせずに)生きていけるんだよ」という教えだとしたら。
「こんな世の中でも、仏様、阿弥陀様にまかせていれば、しなやかに生きていける」という話だとしたら。
「きらり」1曲だけで一つ仏教のお話が作れる気がした。
さて、仏教の話をつっこんでしまったので次に。
新しい日々は探さずとも、ここに
さっき、ラブソングの体裁をとっている、と言ったが、これが「オモテ」の意味だとすると、つぎは「ウラ」の意味を見ていくことになるのだろうか。
メーテルリンクの「青い鳥」で「青い鳥を見つけると幸せになれる、ということで青い鳥を探して大冒険してみたら、実はすぐ近くの鳥かごにいた」=「幸せになるというのは、何か夢を追いかけるということ以上に、日常その目の前にあるものだよ」とさりげない教訓が入っていることはわりと有名だと思う。
その「青い鳥」のような、「日常に幸せはあるんだよ」と、歌っているのがこのフレーズだ。
新しい日々は探さずとも常に ここに
色々見てきたけれどこの瞳は永遠に きらり
ラブソングの体裁として考えるなら、「君の瞳を見ていれば、日常とだってきらりとしたものだし、それは永遠に更新されないよ」という感じだと思う。
一方で、「青い鳥」的文脈を取れば、「退屈な毎日だって言ってるけど、本当は「新しい日々」というのは必ずくる、明日も来るし明後日も来る。そう、常にここに「きらり」と光る日々はある。色々見てきたけれど、そんな日々を見つめるひとみは永遠に思い出になる(きらりとしたものになる)」となるだろうか。
オシャレすぎるロックだこれは
ふと、ここまで歌詞を読みといてみて、自分が思い出した曲が、THE BLUE HEARTSの「TRAIN TRAIN」のこのフレーズだ。
世界中に定められた
どんな記念日なんかより
あなたが生きている今日は
どんなにすばらしいだろう
「(あなたと一緒にいる)新鮮な日々はいまここにある」と「あなたが生きている今日はどんなにすばらしいだろう」の強烈な一致具合である。
※これは偶然だが、藤井風さんとTHE BLUE HEARTSの甲本ヒロトさんはどちらも岡山県出身である。
「きらり」は、冒頭にも言ったように「おしゃれなダンスミュージック」で「ラブソング」の体裁を持っているが、その一方でロックバンドの曲に通ずる「今を最高に楽しめよ」「何もかも裸一貫で一途に行くぜ」という局面を持った、不思議な曲だ。
「きらり」では
息せき切ってきたの
行先は決めたの
迷わずに行きたいけれど(そのままずっとである)保証はしないよ
何かわかったようで
何もわかってなくて
だけどそれがわかって本当に良かった
(中略)
どこにいたの 探してたよ
連れてって 連れてって
何もかも 捨ててくよ
どこまでも どこまでも
と歌っていれば、「TRAIN TRAIN」は
栄光に向かって走る
あの列車に乗っていこう
はだしのままで飛び出して
あの列車に乗っていこう
土砂降りの痛みの中を
傘もささず走っていく
いやらしさも汚らしさも
むき出しにして走ってく
と歌っている。やっぱり似ている。
「いまを見ろ、裸一貫、突っ走れ。」
そんな、「到達点」かのような、一種の「悟り」のようにも感じる曲、それが「きらり」に込められている。そう感じた。
ただね、最後に、「きらり」全歌詞を読み通して思ったのは、
やっぱり最高にラブソングだよな。
全歌詞はこちら▽
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