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"未来への可能性が無い"という貧困

「貧困」とは、何か。


たぶん簡単に想像できるのは、経済的な貧困?


お金が無かったら、貧しいよね。困るよね。

もっと深刻になると、
飢餓、干ばつ、砂漠、アフリカ?



そもそも、生きていくこと自体が難しい。戦争や紛争。
死と隣り合わせの生活。

ハゲワシと少女




しかし、インドの経済学者アマルティア・センは、
「貧困」をユニークなアプローチで捉えようとした。



それは、
個人が秘める未来への可能性の有無で貧困を測定しようとする、
「ケイパビリティ・アプローチ」を提唱した。

アマルティア・セン


つまり、単にお金が無いということが「貧困」なんじゃなくて、


未来に可能性が無い、ということが「貧困」なのだ
と定義した。


たとえば、現在は収入が少なくても、将来、昇進や転職ができる見込みがある場合、

それは「貧困」とは呼ばない。


逆に、
収入は良くても、閉ざされた環境で、

やりたくもない仕事を頭ごなしに強いられる劣悪な環境、

閉塞的な環境に身を置いて、改善が見込まれない場合、

それを「貧困」と呼ぶ。



つまり、アマルティア・センは、

国や個人の経済状況はもちろん重要だけれど、

収入の多さや社会の豊かさだけでは、幸福度は測れない、とした。


幸せ・豊かさとは、お金持ちかどうかではなく、
選択の自由や機会の多さだ、と主張した。


だから彼は、

貧困問題を解決する、ということは、
未来のために人間の可能性を取り戻すための努力をする、

ということとして、その解決に主眼を置いたんだ。




未来に可能性がもてないことが、真の「貧困」だ、と。


「2030年の世界地図帳」では、それにのっとると、日本国内の貧困問題は3つあると書いてある。

1、「シングルマザーの貧困」

シングルマザーは単に収入が一人分しかないために経済的に貧しいだけでなく、

ジェンダー格差がはびこる日本では、未来への可能性の無さ、という貧困も持っている。

母子世帯での就業パターンは主に派遣社員や非正規雇用が主なもので、
女性の進出を謳っていたとしても、女性に開かれている職業というのは少ない。


また、妊娠・出産後の女性の雇用機会が限られていることも問題視されている。


その制限が、可能性の貧困へ陥れる。




2、「高齢者の貧困」

少子高齢化が進行する日本は、超高齢化社会に突入している。


日本の生活保護受給世帯の約47%は高齢者なんだって。

体力が衰えて、持病も増えていく高齢者は一度貧困に陥ると、そこから自力で立ち直るのは難しい。




3、「子どもの貧困」

深刻な問題はここ。子供たちの貧困。

17歳以下の子どもの約7人にひとりが経済的に困窮している状態なんだって。

そして、
子どもを取り巻く経済状況は、その子の成長過程に大きな影響を与える。

大人の貧困層なら、人目を忍んで暮らすことはできるかもしれないけれど、

子どもは学校生活や友達関係を通して、

貧困に対する差別や同情の視線に晒される可能性が高い。



"貧しくて欲しい物を買えないこと"よりも、

"本人が一生拭い去ることができない劣等感を背負い、自分に自信が持てなくなること"、の方が深刻だ。



さらに、もっと深刻なのは、教育の機会が失われることだ。


教育格差。


それはもちろんジェンダー的な格差の方が注目されているけれど、経済的な格差の方が大きい。

そして、この先テクノロジーがこの教育格差を乗り超えられるのか。


技術革新には不安の声が多いけれど、確実に今ある不安の源を解消してくれる。


きっとテクノロジーは、未来への可能性をもたらしてくれる。

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参考:

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望
作者:落合 陽一
発売日: 2019/11/14
メディア: 単行本

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