花粉がすごいですね。スタディ・ミーティング中も鼻がずっと痒くて、途中で抗アレルギー薬を飲みました。
日が長くなってくるのは気分が良いですが、花粉はなぁ。
スタディのふりかえり
昨夜は超自然主義と自然主義をテーマにミーティングを進めました。
ビッグブックを読めばわかりますが、AAは明確に超自然主義の立場を採っています。
人間の力を越えた偉大な力が、絶望的なアルコホーリクたちを回復させたのである。それは「神の介入」という「奇蹟」なのだ、とAAは主張します。
しかし、同時にAAは科学と宗教の間の豊かな緩衝地帯に成立している集団でもあります。ビル.Wはカール・ユングに宛てた書簡でこう述べています。
このように、神学(超自然主義)と科学(自然主義)の中間地点に立つAAは、絶対性を持って超自然主義を主張することをしません。
それはビル.Wの次のような姿勢に明確に現れています。
医学(自然主義)は自分の力で自分の問題を解決し、自律するように言います。宗教(超自然主義)は自分を超えた力に頼り、その力に問題を解決してもらうように言います。そしてAAは「最初はどちらの方法でもいい」と言います。
12ステップから霊的な観点を取り除き、自然主義的解釈を行ってもよいのです。
そして、その人がAAを作っていくならば(ステップ12)、その人は自然と信仰を得て超自然主義を受け容れていくだろう。そんなおおらかな姿勢がAAの姿勢です。
そしてその姿勢は、ジェイムズに由来するものであることを指摘しました。
ジェイムズはこういいます。
下記の図はジェイムズの主張を簡略化したものです。
青い円は私たちの意識、つまり自己をあらわしています。その外にグレーの領域が広がっていますが、これが「潜在意識」とします。
その潜在意識の領域から何かが侵略してきて、人格の中心点に宗教的概念が置かれる、これがジェイムズの回心(Conversion)の基本形となっています。
さて、ではこの回心を何がひき起こすのか。この問いが重要です。
人間の潜在意識が回心をひき起こすのなら、回心は自然主義の領域で説明可能な現象となります。
しかし、回心は潜在意識を通って起こり、その源は人間を超えているものであるなら超自然主義の立場となります。
心理学者としてのジェイムズは、はたしてどちらを採るのか。林研氏の指摘を引用して確認しましょう。
林氏の指摘で理解できるように、ジェイムズは回心の源を明言しません。
この姿勢は多元主義とプラグマティズム、そして可謬主義に立つジェイムズならではと言えるでしょう。
つまり、回心の源をジェイムズは重要視しないのです。その回心や祈りという「交流現象」が本物ならば、「聖徳」の講で論じられた有用性をその人は現実に発揮するはずである。そのような論証をジェイムズは採ります。
これはAAも採用している立場です。
アルコホリズムという病の原因をAAは探求しません。また、AAの解決である「霊的体験・目覚め」をひき起こす力を、AAは特定しません。それはそれぞれが見つけ出し、成長させていくものであるという立場をとります。
ここには前述のビル.Wの立場、つまり超自然主義と自然主義の両方を許容する態度が現れているといえるでしょう。
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さて、そのようにAAは超自然主義と自然主義の両方を許容すると確認しました。
これはカーツがNot-Gotで描いたAAの姿でもあります。AAは人間主義的リベラル(ミーティング・メイカー)と敬虔主義的宗教右派(ステップ・テイカー)の両方をジェイムズの思想を受容れることで受容してきました。(カーツ 2020 : 291−292)
AAの一体性とは、同質なAAメンバーを大量生産することではなく、全く違った世界観のAAメンバーが多元主義と可謬主義、そしてなによりプラグマティズムにおいて協働するものです。
ここの理解が日本のAAではまったくと言っていいほどできていなかったので、現在の日本のAAは明らかな衰退と崩壊の局面に入っています。
今後、日本のAAが再興されるなら、今までの同質性を重視する組織作りではなく、多元主義に基づく本来のAAの姿に土台を据える必要があるでしょう。
そんなことも考えながらのミーティングでした。なかなか重いテーマを扱いましたね。
次回からはついに「結論」に入ります。これまで外部からAAに持ち込まれた相対主義の本格的批判を始めますので、よろしくお付き合いください。
参考文献
カーツ, アーネスト(2020)『アルコホーリクス・アノニマスの歴史』葛西賢太・岡崎直人・菅仁美 訳, 明石書店
ジェイムズ, ウィリアム (1970) 『宗教的経験の諸相 (下)』桝田啓三郎訳, 岩波文庫
林研 (2021) 『救済のプラグマティズム』 春秋社
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