スタディ通信 23年11月号
とても忙しい1週間が終わり、なんか疲れがどっと出てきています。昼と夜の気温差も激しいですね。
みなさん、いかがお過ごしですか。
スタディのふりかえり
先週土曜日に『諸相』スタディは3周年を迎えました。
この3年間はいろいろなことがありましたが、何とかここまで続けてこられて正直ほっとしています。続くはずはないと思っていたので。
これも自分を超えた力の導きなのでしょう。
さて、先週のスタディはこの1年半の間でいちばんと言っていいほど難しい内容を扱いました。
なぜなら、先週のテーマはダーウィン主義とキリスト教神学の問題、そしてその軋轢と対立を乗り越えようとするジェイムズのプラグマティズムという、入り組んだ思想の流れを扱ったものだからです。
ジェイムズはこのように主張していました。
ジェイムズの生きた19世紀は、ダーウィン進化論が引き起こした混乱と対立のなかにありました。
ヨーロッパや米国が依って立っていたキリスト教神学は神の目的論的存在証明をその基礎に持っていましたが、ダーウィン進化論の適者生存と自然淘汰という新しい概念は、「神は目的を持って人を創造した」という目的論を破壊する力を持っていたからです。
中央公論新社『哲学の歴史』8巻にはこうあります。
そのような「不信仰な批判の大波」が打ち寄せるなかで、宗教と科学は鋭く対立していました。
その中でジェイムズは宗教と科学の豊かな緩衝地帯を築こうとします。それがパースから受け継いだ「プラグマティズム」という概念です。
『宗教的経験の諸相』岩波文庫下巻 p.278以下を読めば、ジェイムズの神学への鋭い批判とともにプラグマティズムの真理論が理解できるでしょう。
ここはぜひ読んでいただきたい箇所ですので、ここで詳しく立ち入らないことにします。
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さて、上記の問題はAAにとっても関係のないものではありません。
宗教と科学の間の緩衝地帯を築き上げるジェイムズのプラグマティズムは、AAにとっても「とても役に立つ」ものでした。
AAの共同創始者ビル.Wはユング博士にこのような文章を書き送っています。
神学(宗教)と科学の間にある「緩衝地帯」が、AAがAAを見いだした場所であるとビル.Wは述べます。
この宗教と科学の間の緩衝地帯を作る思想がジェイムズのプラグマティズムであり、それはAAの土台としての機能を果たした、と先週のスタディで論述しました。
それはビル.Wが以下のように述べている通りです。
このようにAAの歴史を見ていくと、ダーウィン進化論を経た時代において、AAがどのようなスピリチュアリティを求めたのかが理解できます。
それは以下のような本質を持つスピリチュアリティでしょう。
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さて、次回は岩波文庫下巻「哲学」を締めくくって、「その他の特徴」に入りたいと思います。
「その他の特徴」では、ジェイムズの美しく有用な「祈り」の概念が展開されますので、お楽しみに。たぶん11月よりは分かりやすいはずです
参考文献
AA (2003) 『アルコホーリクス・アノニマス』 AA日本出版局訳, JSO
伊藤邦武 編(2007)『哲学の歴史 8』 中央公論新社
ジェイムズ, ウィリアム (1970) 『宗教的経験の諸相 (下)』桝田啓三郎訳, 岩波文庫
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