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スタディ通信 22年10月号

ここんとこ心身ともに調子が悪かったのですが、なんとか昨夜の『諸相』スタディが終わってほっとしています。
やはり季節の変わり目はあかんですね。



スタディのふりかえり

さて、今月もスタディ通信はそんな気合の入ったものを書くのではなく、散文形式の気楽なものを書こうと思います。

昨夜はこんなジェイムズの言葉を取り上げました。

もはや確かな事実だと主張してもよいであろうが、はっきりと宗教的なものだといえる経験領域においては、多くの人(どれだけの人であるかは言えないが)は、その信仰の対象を、彼らの知力が真なりと認めるたんなる概念の形で所有しているのではなく、むしろ、直接に感受される準感覚的な実在という形で、所有しているのである。そのような信仰の対象が目の前にいるという感覚が高まったり低くなったりするにつれて、信者の信仰も熟したり冷めたりする。

ジェイムズ(1969) : 99-100

これは、信仰において神を信仰者が感じるとき、それは知識や理論で理解するのではなく、直接に感じる・知覚するものがその土台としてある、ということを意味しています。

AAのスピリチュアルな信仰にしても同じで、ビッグブックはこう主張していました。

まさにその時、私達は信仰の問題に直面した。この課題を避けることはできなかった。私たちのある者は、信仰という希望のある向こう岸に向かって、すでに「理性の橋」をかなりのところまで渡りかけていた。(中略)私達は理性でここまで来れたことに感謝していた。だがなぜか、対岸に上陸するための一歩を踏み出すことができなかった。理性だけに頼って長いことなんとか持ちこたえてきた私たちは、その頼みの綱を失いたくなかった。

AA(2003) : 78

ここでビッグブックは端的に「理性で信仰にたどり着くことはできない」と主張します。それはジェイムズと同じ姿勢であり、AAの信仰の基礎はハイヤーパワーを「経験する」ものであることが理解できますね。

AAはビル.Wがそうだったように、理性的に考えることを大切にします。
しかし同時に、ハイヤーパワーは自分の理性を超えているのだという「敬虔さの感覚」をAAは核に持っていると感じています。

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なので、僕自身は僕自身が経験した・もしくは今現在経験しているハイヤーパワーの弁証をしないようにしています。

「私のハイヤーパワーは○○な存在である」と言っても、それは各AAメンバーがそれぞれ自分で経験することであって、必ずしも僕の神の経験が役に立つものではないように感じます。
そして、理性的な、言語を使った神の弁証には明らかな限界があることを感じるのです。

そんなこんなを踏まえて、僕は下記のジョーの言葉が大好きです。

私たちは人々に神を証明しようとはしない。あなたが信じてみようという気になり、進んでこのプログラムにしたがうなら、そのとき神が自らをあなたに証明するだろう。

ジョー(2007) : 60

ハイヤーパワーが自分にしてくれたこと(効果)はビギナーのために分かち合うが、神の内容・概念について話すことは、控えめな態度を取るという姿勢を、僕はプラグマティズムから学びました。
この姿勢はシンプルでおおらかで、そして役に立つので気に入っています。

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昨夜のスタディの資料を作るにあたって、ヨブ記をぱらぱらと読み返してみました。そこで、神を前にしたヨブのこんな言葉が目にとまりました。

わたしはあなたのことを耳で聞いていましたが
今やわたしの眼があなたを見たのです
それ故わたしは自分を否定し
塵灰の中で悔い改めます

関根(1971) : 160


ハイヤーパワーを体験するとき、人は自分の小ささを思い知って、これまでの古い自分を捨て去るのかもしれませんね。そういえば、そんなことはビッグブックにもありました。

何年もかけて彼が築きあげてきた壁は取り壊された。彼は無限の力と愛の中に立ちつくしていた。彼は橋から足を踏み出して、対岸に渡ったのだ。

AA(2003) : 82


さて、では理性の橋から足を踏み出し、対岸に渡るためには、私達はなにをしなければならないのでしょうか。
そんなことを、「回心」という現象をあつかう11月からのスタディで学んでいこうと思います。

参考文献

AA (2003) 『アルコホーリクス・アノニマス』 AA日本出版局訳, JSO
ジェイムズ, ウィリアム (1969) 『宗教的経験の諸相 (上)』桝田啓三郎訳, 岩波文庫
関根正雄 訳 (1971)『旧約聖書  ヨブ記』 岩波文庫
ジョー・McQ (2007)『ビッグブックのスポンサーシップ』依存症からの回復研究会 訳・出版  


リンク

これまでのスタディ通信の一覧はこちら。


『諸相』スタディのシラバスやスケジュールなどは、下記公式サイトから。