なぜオンラインでスタディをやっているのか

私は2019年にAAにやってきました。
最初のホームグループは今はなき東近江ingグループ。毎週、教会の礼拝堂を借りてミーティングを開いていたのがなつかしいです。片道1.5時間かけて毎週車で通っていたのをおぼえています。

しかし、そこでミーティングでの回復に限界を感じるようになり、12ステップに取り組もうとした際に問題が起きました。12ステップの情報が地域にほとんどなかったのです。
当時はネットにも12ステップの情報はあまりなく、途方に暮れたことを覚えています。しかし、京都のミーティングに行っても大阪のミーティングに行っても、まともな情報はなかった。
東京でイベントがあったり、12ステップに詳しい人がいるのはSNS経由で知っていました。しかし、私のような失業者には東京は遠すぎ、お金がかかりすぎる。

そしてSNSにいる都市部在住のメンバーは、なぜか「原理は言葉にならない」などと嘯き、出し惜しみをしやがる、と私は怒っていました。
いや、出し惜しみをしていたのではないことは今になってわかります。彼らだって何も知らなかったのです。


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そんな強烈な悔しさを経験しましたので、12ステップを経験した私は「地方在住のAAメンバーでも、意欲とネットワーク環境とデバイスさえあれば、どこからでも 12ステップの本質にアクセスできるようにしたい、そうしなければならない」と感じ、『諸相』スタディやスタディ通信執筆をはじめました。
これが2020年のこと。AAにきて1年数ヶ月後のことでした。

私は別にオンラインでAAミーティングがやりたかったわけではなく、オンラインという道具を使ってかつての自分と同じような状況にあるアル中に12ステップの本質を伝えたかったのです。
そのための便利な道具の一つがオンラインであるにすぎません。

ところが、コロナ禍でオンラインのAAミーティングが増えて「オンラインこそが大切なんだ」という風潮すら生まれました。なんだかなぁ、と思います。だって、それはただの道具なので。
オンラインであれ、オフラインであれ、AAの回復の本質はミーティングの形式ではなく12ステップを通じて得られる霊的体験・目覚めです。形式にこだわるのは、手段の目的化でしょう。

この数年、オンラインも活用してわかったことがありました。
それは、オフラインでやっていた「言いっぱなし・聞きっぱなし」ミーティングをそのままオンラインに移植しても、私にはあまり効果がないことです。そういった人との交流の支えの効果は、やはり実際に会うほうが私は強く感じますし、好きです。
もちろん、人の特性によってオンラインでの「言いっぱなし・聞きっぱなし」が合う人もたくさんいるでしょうから、なくなりはしないでしょうけれど。

私はオフラインでやられていた「言いっぱなし・聞きっぱなし」ミーティングをオンラインにそのまま移植することも何度かやりましたが、早々に見切りをつけてスタディ・ミーティングのほうにシフトしました。オンラインの強みの情報伝達の量とスピードの速さは、スタディ向きだと感じたからです。


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そんな営みをつづけて、気がつけば4年になります。早いもんだなぁ。
現在は19年とは違い、オンラインで12ステップの本質にアクセスできるようになりました。しかし、12ステップによる回復が実際に生み出されていくのはここからでしょう。
情報が揃っただけでは良い実践はできません。情報を元に実践し、積み重なった失敗が良い実践の方向性を教えてくれます。本質を知識として知っただけでは不十分なのです。それは体験しなければならない。

しかし、日本のAAはあまりにも失敗不足です。そのわりに失敗を恐れるから、いつまでたっても成熟できない、12ステップが理解できない。

まぁ、そんなこんなを考えていますので、つらつら書いてみました。
ではまた。