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介護の現状と課題

会派の介護政策推進議員連盟の活動で、大府市の国立長寿医療研究センター内にある「あいちサービスロボット実用化支援センター」、「健康長寿支援ロボットセンター」にて、生活支援ロボットの開発や実証研究の取り組みを視察させていただきました。

介護を受ける本人はもちろん、介護支援者の負荷軽減や自立支援を多角的に検討されており、いろんな場面で活躍が期待されると感じた一方、費用面などの課題もあることが伺えました。

今回は改めて、介護における現状と課題をまとめていきたいと思います。


深刻な社会問題

日本は急速に少子高齢化が進んでおり、さまざまな問題を引き起こしています。

介護において言えば、高齢者の増加に伴い介護を必要とする人々が急増する一方で、介護の担い手である生産年齢人口は減少しています。

年金などと同じく、「サービスを享受する側」と「サービスを提供あるいは費用を負担する側」のバランスが取れていない、構造的な問題が起きているということですね。

介護業界の人手不足

日本の介護業界は慢性的な人手不足に悩まされています。

正直なところ、人手不足なのは介護業界だけではありません。ただし、介護業界は非常に深刻なのは間違いありません。厚生労働省によれば2023年の時点で、介護職員の必要数は約20万人不足しているということです。

高齢者の数が増える一方で、介護職に従事する人材が不足しているため、現場の負担は増大しています。特に、介護職は肉体的にも精神的にも負担が大きく、低賃金や過酷な労働環境が問題視されています。このため、若い世代の介護職離れが進み、介護職を目指す人々が減少しています。

政府はこの問題に対処するため、介護職の待遇改善や働き方改革による労働環境の整備を進めていますが、現場の改善にはまだ時間がかかりそうです。また、外国人労働者の受け入れも進められていますが、言語や文化の違いによる課題も残されています。

介護業界における人手不足は、今後も続くと予想され、介護現場の安定的な運営を確保するためには、さらなる対策が求められます。


介護費用の増加

こちらも厚生労働省の発表によれば、介護費用も年々増加しています。

介護保険料だけでなく、自己負担額の増加が家計に重くのしかかっています。厚生労働省は介護保険制度を維持するために、2024年度から収入に合わせた自己負担額を見直すことにしました。現在では介護利用者の収入の度合いに応じて、1〜3割の自己負担が発生します。

介護の利用者が増加するたびに、自己負担額が見直されるリスクもあります。

今後も要介護者の増加が見込まれ、介護保険制度を維持するためにも抜本的な取り組みが必要です。持続可能な社会保障制度の実現には、まだ時間を要すると見られています。


介護難民

介護難民とは、介護が必要な状況でもサービスが受けられない人をさします。介護事業所やスタッフが足りていなかったり、近くに利用できる施設がない地域的な課題が要因になっています。

家族がいるケースでは、施設に入ることができない場合、家族が介護を担わざるを得ず、介護離職にもつながっています。適切な介護サービスが受けられない状況が続けば、介護を担う家族が経済的・精神的な負担を強いられ続ける状況になります。


家庭内介護における課題

日本では、家庭内での介護が主流となっており、特に中年層の女性に負担が集中しています。家族が介護を担うケースが多く、介護離職や介護疲れが深刻な問題となっています。介護を担う家族は、長時間の介護や精神的な負担に直面し、時には自分自身の健康を害することもあります。

また、家庭内介護を行う家族は、社会的な孤立感を抱えることも少なくありません。介護を必要とする高齢者が増える中で、家族だけで支えることの限界が見えてきています。地域包括ケアシステムのような地域社会全体でのサポート体制の整備や、家族介護者への支援が必要です。


ロボットやICTを活用した介護への現状と期待

介護業界における人手不足や費用の増加を背景に、ロボットやICTの活用が注目されています。現在、介護ロボットやICTを利用したサービスが徐々に普及しており、高齢者の自立支援や介護負担の軽減に寄与しています。

介護ロボットは、移動支援や食事介助、リハビリテーションなど、多岐にわたる分野で活用されています。例えば、移動支援ロボットは歩行が困難な高齢者の移動をサポートし、自立した生活を支援します。また、コミュニケーションロボットは、高齢者との対話を通じて孤独感の軽減に役立つとされています。

しかし、ロボットやICTの導入には課題もあります。

コスト面、利用者・家族の抵抗、スタッフが慣れていないことなどが課題として挙げられ、介護ロボットが普及しづらい現状があるのも事実です。それでも、介護ロボットやICTの発展は、一つの可能性として期待を抱かせます。


日本の介護問題は多くの課題を抱えています。そのどれもが一朝一夕で解決する課題ではなく、社会全体での取り組みが不可欠です。

2024年6月には名古屋に「あいち介護生産性向上総合相談センター」が開設されました。

センターは生産性向上の取り組みに関する各種相談や支援を行うワンストップ型の総合相談窓口として開設されました。また、生産性向上の取り組みに関する研修会や介護ロボット・ICT機器の展示会の開催・試用貸出のほか、相談員が介護サービス事業所の業務改善等に関する御相談に応じているそうです。

現場の声を聴きながら、新しい技術にもしっかりアンテナを張っていきたいと思います。


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