本の交換村。
うだるような梅雨の暑い日。
よさくさん主催の「古本を交換しておしゃべりする会」に参加した。
よさくさんとはこの間の文学フリマからのご縁。エッセイを読んでさらにそのお人柄が好きになって、もっとお話ししたい人の1人。
ある日、「こんなのやるってよ」と同じくよさくファンの母から情報提供を受け、迷わず申し込みを決めた。実は前からこうした企画の主催に興味があり、まずは参加者として体験できる場を探していた。
指定のジャンルは、国内の小説かエッセイ。
なんとなく頭に候補を浮かべつつ、実際に本棚に手をのばしたは1週間前だった。
会の案内には「持ってきた本を紹介する」というミッションもある。本が好きな人が集まるんだから、生半可な気持ちではよくないぞと、最有力候補となった本を仕事の行き帰り、電車の中で再読した。
これがまた不思議なもので、別れを決めると離れがたい気持ちがでてくる。読み直しをすすめるほどに本への愛着が増していった。
でもそんな離れがたい本だからこそ、自信をもっておすすめそうできそうだ。ほくほくとそわそわが混ざった気持ちで当日を迎えた。
***
会場には先客がいて、冷えた部屋の奥からよさくさんが迎え入れてくれた。
よさくさん指導のもと名札を作り、順に自己紹介を進めていく。バラバラな趣味の人が集まると思っていたら、想像以上に似た傾向を好むメンバーであることが発覚。この本で大丈夫だったかなと少し不安になった。
さぁ、いよいよ本番。
本を紹介する順番は、よさくさん特製の割り箸くじで決まる。私のカラーは緑。
ドキドキしながらよさくさんの手元を見つめるもトップバッターではなかった。でもこれは決して安心できない。なぜなら、「他の人の発表をきくうちに緊張してくる病」を発症してしまうからだ。
だからあまり後ろでない方がいいな…と念を送っていたら、ちょうど真ん中で緑が引かれた。ありがとう、よさくさん…!(変な念を送ってごめんなさい)
そんな私が紹介したのはこちら。
原田ひ香さんの『まずはこれ食べて』
原田さんの書く「食事」をテーマとした作品は、なにを食べるかも大事だけど、そのシチュエーションをより重視して描かれているように思う。
この本も、これと言って特別なご馳走が出てくるわけではない。でもご飯をみんなで囲む、ほっと一息つくあったかさが、心にじわじわ沁みてくる。
そんなことを熱弁し、自分のターンは終了。
それにしてもみんなプレゼンが上手い。この中で一冊しかもらえないなんてものすごく惜しい、と思った。
プレゼンが終わったらいよいよ交換。
割り箸くじで引いた色の方が持ってきた本をもらうことができる。
私がもらったのはこちら。
ご飯が出てくる話はよく読むけれど、フードエッセイというジャンルには詳しくない。
ただプレゼンの時に読んでもらった抜粋で「この本絶対面白い」と思っていたので、手元に来た時はあの続きが読めると思うと、すごく嬉しかった。
よさくさんの呼びかけで偶然集まったメンバーと本。
好みが合わない可能性も大いにある。だけど、自然と雰囲気やスキが似通った会になった。
これはまさしくひとつの界隈、本の交換村。
わたしもいつかこんな村を作りたい。
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