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経済的に破綻した翌月に子供が生まれた夫婦の話し。(その9)鮎小屋「金川」
「君、金川しらんか?」と村下会長から質問された私は、心で「知らん」と呟いていた。
村下会長が話題にした「金川」は隣の富山県で鮎料理が有名な「旅館金川」の鮎小屋の事でした。
その頃の私は鮎料理になんて興味はありません。
ですので金川なんてお店は知りません。
とにかく目の前の埃がたまった建物を金川にできるか?と言われて困っていました。
そんな思いを無視するように、村下会長は「とにかくあれをパクッて作ってくれたら絶対にうまくいく。」「頼む、やってくれ!」と話しながら施設の奥へと進んでいきました。
私は北野社長と目を合せました。
私はこの話は大丈夫ですか?と目で訴えました。
しかし施設中に村下会長のセールストークが響き、施設全体が村下会長のオーラに包まれて行くのを感じました。
一通りの施設内の説明を終えた村下会長は鮒男にむかって、あとはまかせるから二人で相談してくれと言い残し「一服してくる」と煙草をくわえ北野社長と外へ出ていきました。
残された私と鮒男とボクサー3人の間には、なんとも言えない気まずい空気が漂っていました。
実はこの時の私はこの話は、おいしいのでなく怪しい話だと考え絶対に断ろうと決断していました。
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