セツナ

昨日新しい出会いがあって
明日はどこかで別れがあるかもしれない
気がつけば周りの景色が変わっている
自分が止まっているようにも思える

相変わらずこの世界は慌ただしい

日々をなんとかやり過ごして、へろへろの頭で、その濁流のように流れる景色をぼんやり眺める

毎日その風景を眺めていると
時折、その流れの向こうで、同じようにぼんやりこちらを眺めている誰かを見つける

「あなたと私は、流れている時間が似ているらしい」

いつか、目が合った誰かにそう教えてもらった
自分達はただ立っているだけなのに、留まることなく動き続けているらしい
それぞれの速さで、それぞれの場所へ

濁流のような景色のそれは、様々な速さで動き続ける自分と同じ生き物なのだ、ということも教えてもらった

「僕らからみた彼らは濁流の様に流れていく風景だけど、彼らから見た僕らもきっとおんなじなんだと思うよ」

だからって、なにがどうということではないけど

彼がぼそっとつぶやく


蛍光灯の明かりで目が覚めた。
10月も半ばに入り、頬から感じる床の温度はいい具合にひんやりしている。
時計の針は3時を指しているが、雨戸を締めきっているから外は暗いのか明るいのか分からない。

寝ぐせのついた頭を掻きながら、台所の水道水を乾いた喉に流し込み、じんわり潤っていくのを味わう。

そして、さっきまで見ていた風景を思い出す。

彼は、なにがどうということではない、と言っていたけど。

あの濁流の中での対話は、オレが俺でいるためにとても大事な時間の様な気がした。

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