御子柴 久兵衛

 時女静香たちと行動を共にしているキュウべえ。本来魔法少女たちと行動を共にするインキュベーターは6歳以上18歳以前の肉体年齢の個体だが、彼はその例外として肉体年齢は42歳である。

 これは時女一族の里に住むインキュベーターたちの出生の背景によるところが大きい。

時女の里のインキュベーター

 時女の里はもともとインキュベーターたちが使っていた隠れ里の1つであり郷の住人たちはインキュベーターを「久兵衛様」と呼び土着神として信仰いた。

 当時はバイオテクノロジーが未発達だったこともあり、インキュベーターが個体を増やすには人間の女性との性交渉という原始的な生殖を行い増えるしかなかったため、インキュベータたちは達里の女たちと交わることで個体数を増やしていた。

 久兵衛様との間に子を作ると言う事は、神聖な行為とは受け取られていたものの一方で、長い共存の歴史の中でインキュベーターと人間の女性との間に生まれるのは結局インキュベーターのコピーに過ぎないということを里の人々も自然と理解していたため、さすがに久兵衛を世継ぎと認める家などなく、久兵衛様と結婚するのは大抵その家の次女が三女と決まっていた。

 やがて御子柴の1族が里にやって来て、血なまぐさい小規模な闘争を経た末、郷に住み着いてから戦っても不利だということがわかったため御子柴氏は久兵衛を守護することにしたが、当初は久兵衛の本質をよく知らなかったため単純に久兵衛との間に子供を作ればそのまま1族として里の実権を握れると勘違いしたものの、何度か失敗を繰り返しようやくその本質に気づき以降一族の掟で、「絶対に久兵衛様とのあいだで子供を作ってはいけない。下手すれば断絶する」ということになったものの、次第にその記憶が時間とともに薄れていった。

誕生の背景

 やがて近代を迎え、大戦の終結から40年が過ぎた頃、御子柴家は先の大戦の爪痕や不幸な事故等が重なりまくった結果の最後の生き残りとなった女がいた。

 かつて彼女は若かりし頃、巫になろうとしていたものの久兵衛様たちの耳と尻尾を見ることができなかったためその資格がなく、一族も遠縁を除いて弱体化し、このままでは里の実権すら失いかねない状態だった。

 そんな彼女がとった行動は神官一族の一人である自分をよりその神に近い存在に近づけること。すなわち土着神である久兵衛様と子を作ることだった。

 インキュベーターたちの本質は完全に忘れ去られ、女はたとえ子供を作ってしまったとしてもそれは複製に過ぎないと言う事を知らなかった。女は神の子を産んだ。自分の体が保つ限り。そうしてその神官としての地位を確立した。そして自分が産んだ久兵衛を自分の子供として育てたが、彼女は気づいていなかった。否、もしかすると気付いていたが気づかないふりをしていたのかもしれない。彼らにとって〈母親〉はあくまで自分と言う個体を産んだ女に過ぎず、彼らの中で既に神子柴の遺伝子は消されていたと言う事実に。

 しかし里では、一応彼女より生まれた久兵衛たちは神子柴の子と言うことになり。里の中心的な存在と崇められた。

静香との関係


 そのうちの1体は、時女一族本家の一人娘・時女静香と将来結ばれることを求められ、彼女が幼き頃より行動を共にすることとなる。

 いわば許婚であるが、これもまた神子柴が時女と結びつくことにより、里における権力基盤を確かなものにすることを志向していた。

 その個体こそが、神子柴久兵衛であった。

神子柴への叛逆

 彼は神子柴に忠実で、母親を絶対に裏切らないと思われていたが、それはインキュベーターの本質をすっかり忘れていた神子柴および里の人々の思い込みであった。

 神浜市で起きた〈ワルプルギスの夜〉殲滅戦に際し、魔法少女たちと停戦し共同戦線を張ったインキュベーターたちに参戦する形で、ときめの里に住むインキュベーター及び時女一族の存在が明らかになったことで調査にやってきたマギア・ユニオンと見滝原の魔法少女たち、そして里に新しくやってきた広江ちはる の活躍で里の実態が判明した時、いよいよ神子柴を追い詰めようとしたところ、時女の魔法少女〈巫〉達は当然彼が母親側につくと思ったものの、あっさりと裏切って魔法少女たちに味方した際は周囲を唖然とさせた。

 結局、巫および魔法少女たちと協力して神子柴がけしかけた魔女を殲滅。さらに彼女を捉え、2月できないように積めばに仕込んだどこを積めばことをナイフで取り出し、尋問にも積極的に協力。その際、神子柴は「お主を産んでやった恩を忘れたか⁉️これが母親に対する仕打ちか⁉️」と血を吐きながら絶叫したが。久兵衛たちにそれが通じるわけもなく「僕たちにしてみれば君はあくまで僕と言う個体を生んだ女に過ぎない」「どうしてあなた達人間は、誰の母胎から生まれたとか血縁とかにこだわるんだい?訳が分からないよ」と返した。

 この時点で事態を見守っていた魔法少女、巫とその家族はインキュベーターたちが極めて異質な存在だということに初めて気がついた。その直前に母親から「あなたは誰のお腹から生まれたのか考えてみなさい」と言われた静香などそれを聞いて戦慄したと言う。


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