iPhone ユーザーの為の XCTrack 代替マニュアル(1)
このタイトルに興味を持ち、訪問していただいたフライヤー様、あなたがiPhoneで行いたいと思っていることは、以下のうちどれでしょうか?
フライトログの取得 & Web サービスへのアップロード
ウェイポイントによるタスク設定 & フライトのナビゲーション
オンライン GPS ライブトラッキング
安心してください、iPhone で全部できますよ!
本マニュアルでは、「1. フライトログの取得 & Webサービス」および「2. ウェイポイントによるタスク設定 & フライトのナビゲーション」の二つについて、SeeYou Navigatorというアプリを使って iPhone で行う方法を紹介します。
SeeYou Navigatorには、本来「3.オンラインでのGPSライブトラッキング」も実現可能な機能があります。ですが、SeeYou Navigator がこの機能で使用する技術は Fanet + / OGN をベースにしており、電波区分の違い等により、いまのところ、まだ日本での利用は現実的ではありません。
また、日本国内にあるパラグライダーのフライトエリアの一部では、LiveTrack24 上での GPSライブトラッキングの共有が必要となるため、これに対応できる iPhone / iOS アプリである「flyskyhy」、また「flyskyhy」と「SportsTrackLive」の連携等を中心に、別途 iPhoneでのオンラインGPSライブトラッキングの情報をまとめる予定です。
安心してください、iPhone で全部できますよ!
そう、iPhone ならね。
でも、もう少しお待ちください。
このページは、6章立で構成されるマニュアルの「1章:はじめに(SeeYou Navigator のご紹介)」です。
補足情報:
本マニュアルの SeeYou Navigator ならびに iPhone / iOS の設定・操作に関する記載は、個別の記載がない限り、下記環境での操作を前提に記載をしています。これ以外のバージョンの場合、設定・操作が異なる場合があることをご了承ください。
iPhone / iOS 環境: iPhone 11 Pro / iOS 17.3.1
SeeYou Navigator 環境:v3.0.0+2148
1 章:はじめに(SeeYou Navigator のご紹介)
(1) SeeYou Navigator のご紹介
SeeYou Navigator は、ハイエンド一体型GPSバリオ「Oudie N」やエントリーモデル「Omni」、XCプランニング/フライト解析用 Windowsソフトウェア「SeeYou」および、クラウドサービスである SeeYou.Cloud を製造販売元の Naviter 社が提供するアプリで、iPhone/iOS、Android に対応しています。
Naviter が提供する一体型GPSバリオの「Oudie N」と「Omni」は、Android OS上で SeeYou Navigatorが稼働するハードウェアであり、このアプリは、そのソフトウェアをユーザーのスマートフォンで稼働できるように Naviter が提供しているアプリということになります。
SeeYou Navigator は、2024年2月現在、無料版が機能制限付きで利用可能です。年間 49€で SeeYouのサブスクリプション契約をすると、SeeYou.cloudなどの利用も含めたバンドル形式で機能制限を解除することができます。詳しくは、こちら(英語)をご参照ください。
「1. フライトログの取得 & Webサービス」と「2. ウェイポイントによるタスク設定 & フライトのナビゲーション」のいずれも無料版でも実現可能で、昨今当たり前で非常に利便性の高い QRコードによるタスク共有機能も利用できます。互換性があるため、XC TrackとのQRコードでのタスクのやり取りも可能です。
無料版で利用できる機能については、こちらの公式 Knowledge Base の記事(英語)をご参照ください。
サブスクリプション契約をすることにより機能制限を解除すると、一体型 GPSバリオと同様のハイエンドな機能を全て利用することができます。さらに、バンドル形式で利用可能となる SeeYou.cloud との連携を行うと、ウェイポイントファイルの作成から管理、XC プランニング、タスクの作成や管理からログ管理や解析といった、昨今のフライトとフライトのマネジメントに必要とする関連作業がシームレスにできるようになります。
SeeYou Navigatorは日本語に対応しておらず、日本語を使っている iPhone の環境だとデフォルトで自動的に英語に設定されます。また、設定変更により、英語を含む8つの欧州言語を選択可能です。操作時のメニューや地図内の地名表示などは、デフォルトの英語を含め設定されてた外国語で表示されます。
(2) Knowledge Base(英語)
詳しく把握はしていませんが、セールプレーンの市場では Naviter のフライトコンピュータ(ハイエンドGPSバリオ)「Oudie」シリーズは歴代、世界的に大きなシェアを持っているのかと思います。
パラグライダーのコンペティターの間では世界的に Flymaster が強いとはいえ、「Oudie」シリーズはパラグライダーやハンググライダーの市場でも一定数のシェアをもっています。
ご存じないパラグライダーのパイロットの方にあらためてご案内すると、提供元の Naviter は、決して怪しくありません、トップ企業です。SeeYou Navigator も、「Oudie」上で動く実績は十分あります。
一方で、このアプリ版の SeeYou Navigator は、Android 版も含めて、極めてユーザが少ない印象です。
パラグライダーのパイロットにとっては、スマートフォンで同類のことをするなら、フリーソフトの Android用アプリである「XCTrack」がデフォルトです。世界中に沢山のユーザーがおり、日本でも同様にコンペティターを中心に多く普及しています。それ故に、困ったときは「母国語で聞ける人が沢山いる」というメリットがあります。
現在、私は XCTrack はレース用、SeeYou Navigator XC 用という使い分けをしようとしており、その経験でいうと基本的な機能には大きな違いはありません。強いて言うと、メニュー等の表示が日本語に対応していないくらいです。
SeeYou Navigator は、十分に使えるというレベルではなく、すごく使えます(当たり前です、実績十分なハイエンドモデルと同じソフトウェアなんだから)。
ですが SeeYou Navigator を使う最大の懸念点は、ユーザーが極めて少なく困った時に「聞ける人が皆無」ということです。
この懸念点の解消には公式のマニュアルを利用してください。
Naviter が公式 HP で公開している Knoledge Base (英語)は、「スマートホンアプリ版の SeeYou Navigator は、Oudie N、Omni という一体型 GPSバリオと共通のソフトウェアであり同一の操作となるため、一括して纏めるマニュアル構成となっている」という一点さえ理解していれば、極めてわかりやすく充実した内容となっています。
昨今、ブラウザ等の機械翻訳機能をつかえば日本語への変換も容易なため、ややわかりずらい翻訳となるケースが無いとはいえませんが、英語が苦手な方でもザックリ読むことは可能です。また、わからなかった箇所のみ原文をあたれば効率的に読むこともできます。
念のため、iPhone の標準ブラウザ「Safari」で機械翻訳する方法は下記の通りとなります。
Safari を開く > 翻訳したいページを訪問する > Safari 下部にあるアドレスバーの左にある文字のアイコンをタップ > 表示されるメニューから「日本語に翻訳」をタップ
このマニュアルでは、パイロットの方が最短で SeeYou Navigator を使って「1.フライトログの取得とオンラインサービスへのアップロード」や「2.ウェイポイントによるタスクの設定やフライトのナビゲーション」をできるよう、関連する主な機能や操作方法のみを順を追ってご紹介いたします。
より機能の深堀をしたい方は、公式 Knowledge Base(英語) を利用することで人に聞けないデメリットを解消ください。
フリーソフトウェアである XCTrack はもちろん、SeeYou Navigator についても、この時代を背景にベンダーとユーザーが直接行うサブスクリプション契約で製品とサービスが提供されており、日本国内では製品の販売で対価を得る関係者はいません。
このマニュアルを公開しながらやや矛盾したことを書きますが、現在の提供体系のなかでは、本マニュアルに記載していあるような機能把握や操作内容はもちろん、個別環境で発生するバグ的現象も含めて自分自身で習得・解決できるユーザー、あるいは自身で Naviter に直接問い合わせができるユーザーのみが利用するものであるという原則を理解ください。
余談ですが
私は、元々、XCTrack を元々触っており、顧客に最適な一体型 GPSバリオを提案するにあたり、本体はもとより関連サービスについて熟知をしておきたく、調査目的で SeeYou Navigator を触りはじめました。
そうこうしているうちに、SeeYou Navigator の画面の綺麗さが気になったり、セールプレーン用の気になる機能を発見し、ミイラ取りがミイラ的(?)に今では XCTrack はレース用、SeeYou Navigator XC 用という使い分けをしようとしています。
そして、一体型バリオも含めて、本気で飛ぶときのフル構成としては、下記のような役割分担による使い分けをしています。
このマニュアルを読んでいる方は、XCTrack をあまり使ったことのないパラグライダーのパイロットの方がほとんどなのかと思います。大した内容ではないので、下記の構成を真剣に読み込む必要なんてありません(トップ選手の構成を参考にした方が良いです)。ざっと考えてみただけなので、記載ミスもあるかもしれません。
お伝えしたいのは、SeeYou Navigator を iPhone で使い、「1.フライトログの取得 & Web サービスへのアップロード」だけならまだしも、「2.ウェイポイントによるタスク設定 & フライトのナビゲーション」にまで使いだすと、「こういうことを考える」必要が生じますということです。
【一体型 GPSバリオ】
特徴:
GPS バリオとして基本的な機能はおおよそ備える
カラー液晶モニター
ウェポイントの取り扱いとナビゲーションが可能
地図表示も可能
マスストレージとして扱いが可能で、筐体内で IGC形式でログファイル生成をしてくれるもの
Wifi 対応や SIM対応はしておらず、スマートフォンとのコネクテビティも備えない一世代前の製品
主な用途:
バリオ機能、風向風速と自速の確認と東西南北等の基本的なフライト情報
サーマルアシスタントの表示
これらに必要な地図機能確認
正確な IGC形式でのログファイルの取り扱い
CTR の取り扱い
【XCTrack / SeeYou Navigator】
特徴
XCTrack を使う場合- Android 互換の中華スマホで利用
SeeYou Navigator を使う場合 - iPhone
主な用途:
ウェイポイント・タスクの取り扱い
ナビゲーション
タスク、シリンダー、ルートの確認
次の WP、ファイナル、L/D、飛行距離等々、レースと XC特有のフライト情報の表示
簡易の IGC形式でのログファイルの取り扱い(バックアップ)
【音だけバリオ】
特徴
気圧・GPS センサー付き
BLE 対応
主な用途:
XCTrack / SeeYou Navigator への気圧・GPS 情報の連携
※ フリーフライトの時は、一体型 GPSバリオだけだったり、XCTrack + 音だけバリオだけだったりと、状況によってまちまちです
全体構成と役割分担を考えて、そのための画面レイアウトを作りこんで、飛びながら試して修正して、でもある時「あれ、この機材があるとこういう構成にもできるぞ?」と気づき、また少しずつ変えていきます。
そしてどんどん沼にハマりこむ上に、フライト前の充電が欠かせない機材が増え、フライトがちょっとだけ億劫になります。
気の利く輸入代理店の方が扱う一体型GPSバリオを正規のルートで購入しているなら、あるいは、スクールがオススメする一体型 GPSバリオなら、「この機能はこう!」と即返ってくるし「こういう画面のレイアウトがおすすめ!」「xxxx選手が使ってるレイアウトだよ!」と、購入した一体型 GPSバリオ用の画面レイアウトの設定ファイルをくれたりします。それだけ充電すればOK。
そちらの方がよくないでしょうか?
現在、日本で XCTrack を使っている方のなかには、一体型バリオが普及した初期の GPSバリオを利用し、初期の一体型 GPSバリオができない機能を XCTrack で補完するために利用されている方がいます。
そもそもナビゲーション機能が無かったり、ナビゲーション時に地図表示やルート全体やシリンダーの閲覧ができなかったり、複数タスクの管理ができないモデルであったり、更には、マスストレージの取り扱いと IGC ファイルの筐体内生成ができずログの取り扱いに苦労していたり(一体型 GPSバリオを PC に接続して、すぐにファイルシステム上のログファイルを Web サービスにアップロードすることができません)等々。
この場合、確かにその古い一体型 GPSバリオを使い続けつつ出来ない機能を補う目的で XCTrack を使うというのは、新しい一体型 GPSバリオを購入する費用をおさえるという観点だけでみると有効な手段です。アプリ版の SeeYou Navigator を利用した場合についても、同様のことが言えます。
ただし、そういった目的で初期から XCTrack を利用し満足されている方々は、自分自身で XCTrack に習熟し、あるいはバグを踏む人柱になったり、個別環境で発生する障害を自分自身で解決してというプロセスをふんでいることを忘れないでください。手間と時間がかかります。
一体型 GPSバリオと違い、スマートフォンという多種多様なプラットフォームで動かすため、個別環境で起こるアプリのバグともいえない障害的現象が個別に起こることは「付き物」です。iPhone では供給元が一社のため多少解消される可能性はありますが、それでもモデルも OSバージョンもまちまちです。
更には、バッテリー等の周辺機器や、特にパラグライダーのパイロットはマウントに悩むことになります。コンテナに置けばよいといっても、脱落防止や固定する方法を考えなくてはいけないし、更には野外でもモニターが見えるように工夫が必要になります。
「これが良いのでは?」と機材を買って、思ったように使えずに買いなおして、自転車用やバイク用を試したり、建材で自作してみたりと試行錯誤が必要で手間も時間もお金もかかります。更には、満足がいかずにそのうち CAD を引いて 3D プリンターで自作してみたり、今度は電子工作で気圧センサーを自作してみたり、ガワから取り外して自治体や業者が引き取ってくれないリチウムイオン電池を自分で処理して一般ゴミとして捨ててみたり、それ、一体型GPSバリオを買い替えるよりよっぽどコストがかかっているし、むしろそれ自体を楽しむ目的ではないでしょうか?
皆様、愛すべき、度を超した変態さん達で、様々な特殊な沼の主なのです。そういう方は全然良いんです。
XCTrack を使ったことのないパラグライダーのパイロットの方でこれから SeeYou Navigator を iPhone で使ってみたいと思っているフライヤー様!
超~、面倒くさくないでしょうか?
正直、どん引きしませんか?
まだ、引き返せますからね。
全て、自分で解決しなければいけないんですよ!
あと、結局のところ、最低限、気圧センサー付きのバリオが別途必要ということも忘れないでください。
XCTrack の普及は、パラグライダー用の一体型GPSバリオに機能面でも商業面でも大きな影響を与えています。一体型 GPSバリオは、普及の初期からいくつかの転換期を経て、現在のトレンドは、ハイエンドモデルの「IoT化」と、インターミディエイトモデルの「BLE によるスマートフォンコネクト」に二極化する時代に入っています。
インターミディエイトモデルの中には、XCTrack や SeeYou Navigator をスマートフォンで稼働させるために様々なコストをかけるより安価に購入できる機器があります。
そして、そのようなモデルは、モニターがあることも含めて一体型 GPSバリオの基本的な機能を有しながら低消費電力でスマートフォンと連携ができ、スマートフォンを通じて GPS ログファイルを Webサービスにアップロードできる機種があるだけでなく、多くは XCTrack や SeeYou Navigator に気圧・GPS 情報の提供をすることができ、XCTrack や SeeYou Navigator を通じてスマートフォンから同様にアップロードが可能です。
スマートフォンで動く以上、XCTrack も SeeYou Navigator も、今のところ最低限、気圧センサー付きのバリオが別途必要ということを考えると、まずは今「BLE によるスマートフォンコネクト」な一体型 GPSバリオの買い替えをしてしまう方が、将来も含めてトータルでははるかに安価に済ませられる可能性が高いです。
全てができるハイエンドモデルを買って、お金で解決するのだって、もちろんありです。
まだ、引き返せるんですからね!!
全体目次
1章:はじめに(SeeYou Navigator のご紹介)
2章:SeeYou Navigator の DL と iPhone / iOS の設定
3章:SeeYou Navigator のアカウント作成と初期設定(準備中)
4章:フライトログの取得とオンラインサービスへのアップロード(準備中)
5章:ウェイポイントファイルとタスク設定、フライトの為の画面レイアウト(準備中)
6章:おわりに(準備中)
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