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じぶんの容量

 最近、日本酒が飲めるようになった。といっても、せいぜいおちょこに一杯、せいぜい二杯。少しずつ、なめるように飲む。必ずお水を飲み、ゆっくり、ゆっくり。かなり飲める人は、味噌や塩を舐めながら一合はいけるというが、その逆。しめしめ、飲めるじゃないか。

 飲む量は少しでも、日本酒は和食によく合う。やはり和食には日本酒、というこの偉大なる真理を人生の後半に実感できた。大げさだけど、うれしいな、よかったなと、小さな、まことにささやかな喜びを感じていた。

 しばらくたった先日。調子に乗ったわけじゃないけど、痛い目にあった。敗因は先に飲んだビールではないかと思う。胃の中が「混ぜるな危険」状態になったのだろう。夫が飲んでいた日本酒をおちょこに一杯、その後、個性のある新潟の名酒をちょっと舐めた。夫から、これはきついから気をつけて、と注意されていた。アルコール度数が高め。あっ、確かにこれは・・と思い、すぐにやめた。

 ほんのひと口なのに、反応は激しく、生汗が出て、眠くなり、その晩はなかなか大変だった。ううう。越後の名酒に申し訳ない。翌日も夕方まで、いわゆる二日酔いの症状。飲む量は関係ないことも身を持って知った。

 日本酒が飲めるようになったと、つかの間、いい気になっていたが、体質が激変し肝臓が強くなったわけじゃなかった。ほんとに残念だ。

 だって、考えてみなさい。と私はじぶんを諭した。そもそも若い頃はまったく飲めなかった。ビールひと口で顔が真っ赤になる。目の前がシャーシャー、終った後のテレビ、いわゆる砂の嵐のようになる経験を何度もしたではないか。眠くなるというか、意識がなくなるというか。飲んでも、日本酒やハードリカーは化学薬品のようでおいしいと思えなかったし、ワインですら受けつけなかった。このことをよくよく頭においておかなければ、辛い結果になる。

 よく酒豪というが、それは、アルコールを処理する酵素を持つ体質の人。調べたら、アルコールをアセトアルデヒドに分解するADH(アルコール脱水素酵素)、アセトアルデヒドを酢酸にするALDH(アルデヒド脱水素酵素)、これらを持っていれば適切に悪い成分を処理できる。私はこれが少ないらしい。残念(二回目)。

 人にはそれぞれに持って生まれた容量というものがある。その中で楽しく生きていこうと思う。酒は人を謙虚にする。失敗は人を豊かにすると思いたい。とほほ。

          写真(菊水酒造ミュージアム)、文章とも©敷村良子

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