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亀歩当棒録013.御蔵島山麓にオーム鳴く(2011年10月)

 東海汽船で早朝に御蔵島に着いて,まず島の鎮守の稲根神社に参拝。旅の無事と島内散策のお許しを願う。ん,よし。じゃあそろそろ行きますかぁ― と参道を引き返して歩き出すと,遠くに鳥の影が。何だあれ?

 山の斜面,大型の鳥が樹の枝にふんわりと舞い降りた。サイズ的には一瞬カラスかトビかと思ったけれど,やけに鮮やかな黄色と青の羽。

 えっ?あれコンゴウインコ!?

 ルリコンゴウインコ(瑠璃金剛鸚哥)。動物園などでお馴染みの,南米原産で世界最大級のインコだ。それがなんで伊豆諸島の御蔵島にいるんだ?

 そのあと島役場や観光協会を巡って,あのぉ~すぐそこでコンゴウインコを見かけたんですけれど…と尋ね回ってみると,わかったことがいくつか。

 ・島にいるのは1羽で雌雄は不明。
 ・15~16年前から島で見かけるようになった。
 ・いちど捕獲され,しばらく飼われていたが,籠抜けした。
 ・その後も島に棲み続けている。
 ・基本は野生生活ながら,たまには里で餌をもらうらしい。

 それにしても何で?どこから来たんでしょうか?

 「あくまでも想像なんですけれどね」と断りながら,島の方がおっしゃるには,

 「たまたまペットを載せた貿易船が,たまたま御蔵島の近くを通ったときに,たまたまコンゴウインコが抜け出して,たまたまそのまま島に居着いちゃったんじゃないかって。そう話してるんですよ」

 ええぇ~,そんな作り話みたいなことが本当に有り得るんですかね。いったいいくつのたまたまが重なると…でも確かにコンゴウインコはそこにいるわけだしなぁ。うむむむむむ。御蔵島山麓にオーム鳴くかぁ。こんなこと誰かに話しても信じてくれないだろうなぁ。

付記:御蔵島のコンゴウインコのその後は杳として知れない。おそらくは島の土に還ったと思われます。

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