夜の探し人

 夜。眼下に見える街並みは無機質な光に輝いている。コフィン・ビル最上階の特製暗室の主、加賀美は溜息をついた。なんとも、暮らしにくい世の中になったものだ。
 街の明かりは昼と変わらないほどに眩い。皮膚が焼けることはないだろうが、それでも嫌悪感は残る。

 それに。暗闇の中で瞳が紅く輝いた。街のあちこちをツーマンセルで行くのは、機械化装甲を身に纏うアンドロイド・ガード。
 あの手の味気ない連中も増えてきた。今やこの国には、オーガニックな人間などほとんどいない。
 長生きなどするもんじゃないな。溜息が止まらない。

 さりとて嘆いてばかりでもいられないのが辛いところ。どうしたって渇きはやってくる。加賀美は立ち上がる。その輪郭が不意にぼやけた。
 まずは情報屋の犬のところだ。間食ついでに仕事が来ていないか確認するとしよう。
 加賀美は窓をすり抜け、その身を蝙蝠の群れへと変えて夜空に飛び込んだ。

【続く】

#逆噴射プラクティス

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