忍殺TRPGソロリプレイ【キャット・インバイト・ビッグマウス】#2

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ(訳注:二次創作小説)となります。いわゆるリプレイだ。気楽に読めるよ。

 そして続き物でもある! 前回のお話はこれです。

 マネキネコを購入した先で遭遇した不可解な死。謎めいたネズミの行動。見つからないイマトヤキ……それらの大元を調べるため、ニンジャ一同はネズミの巣穴と化したセタガヤ・ケイヴの調査に乗り出します。

 では行ってみよう。よろしくおねがいします。



◇探索開始:セタガヤ・ケイヴ◇

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 セタガヤ・ディストリクトの外れに存在する自然洞窟。それがセタガヤ・ケイヴだ。ここに流れる地下水道はタマ・リバーにも繋がっているとか、いないとか。そうしたはっきりしない情報がある。

 なにしろ暗黒メガコーポが廃棄物を不法投棄しているような場所だ。それを目当てにホームレスやヨタモノが集まっている。そのため、観光客はもちろん地元の住人さえも近寄らない。

「どうだ、カテドラル=サン? ネズミいたか?」

「ええと……見える範囲にはいなさそうです」

 その入り口に今、三人のニンジャが並び立っている。洞窟の中を透かすように目を見開くカテドラルに微笑しつつも、エスコートは探索プランを練り上げていた。

 ソウカイネットから検索したケイヴの地形情報を把握し終えた彼は、連れの二人……シングルラブルとカテドラルへ振り返る。

「ひとまず中央の地下水道に沿って時計回りに探索していこう。必要なのは情報だ。無闇に現地住民には手を出さないように。それでいいかね?」

「「了解」」

 同意が得られたことにエスコートは満足げに頷く。彼らはそのままケイヴの中へと潜入した。


◇◆◇◆◇


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 そして歩いて数分もしないうちに第一住人と遭遇したのである。もっとも、相手は落ち着いてインタビューに応じられるような状況ではなかった。

「……まあ! 酷い傷!」

 壁に寄りかかるように身を横たえ、荒い息を吐いていたのはホームレスと思しき男。その衣服のあちこちに血の染みが広がっている。特に酷いのは脚だ。徹底的に痛めつけられたと見え、歩くこともままならないのは一目瞭然。

「ウウッ……あ、あんたらは……?」

「え……と、通りすがりのものです! あの、エスコート=サン」

 振り返るカテドラルに、エスコートは頷いてみせる。話を聞くにしても今のままでは覚束ないだろう。慌ててホームレスに駆け寄り、医療キットを取り出して応急処置を始める彼女の背を眺める。

 そして、処置と並行して行われるカテドラルのインタビューに耳を澄ました。

「いったい誰にこのような酷いことを……!?」

「こ、この先の……ヒョットコの連中だ。あいつら、ここに流れてきたヨロシマンの住処を襲撃するって……お、俺はそれを聞いてたから……」

「……ヒョットコ?」

「センター試験に落ちこぼれて好き勝手やり始めたクズどものことな。あいつら、こんなとこにもいんのかよ」

 首を傾げるカテドラルに、シングルラブルが端的に答えた。エスコートは思案する。ヒョットコはともかくとして、ヨロシマン。流れ着いた。なんのために?

「そのヨロシマンというのはどこに?」

「む、向こう側だよ。行きゃあすぐにわかるはずだ。なんせ扉が目立つ……イタタ……」

「じ、じっとしててくださいね」

 親身に治療を続けるカテドラルを尻目に、エスコートは洞窟の奥を見やる。ヨロシマンを訪問するか、それともヒョットコたちをどうにかするか。

(まず近場から潰していくか)

 結局、彼はそう結論づけた。

コモントレジャー回収
(1,2) 【万札】0→6
ホームレスとレアトレジャーはそっとしておく​


◆◇◆◇◆


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 容態が安定したホームレスを残し、エスコートたちは洞窟を南下。無理やり取り付けられたような扉を前に立ち止まった。

「ここがヒョットコの巣だな」

「爺さん、どうすんだ? インタビューすんのか?」

「できなくても突入しましょう。ひどいことをした報いは受けてもらわないと!」

 カテドラルが鼻息荒く提案する。実際珍しいことだ。エスコートは髭の奥で微苦笑を浮かべた。仮にもソウカイヤが振りかざす理論でもない気がするが、まあよかろう。

「ではお邪魔するとしようか。準備は?」

「いつでも行けます!」「オレも」

 力強い返事に頷きつつ、エスコートはドアノブを握った手に力を込める!

エスコート:【カラテ】解錠判定
(1,1,2,4,5) 成功!

イヤーッ!

 ドアノブを破壊し、ドアを蹴り開ける!「エッ!? 強盗!?」「テストに出ないぞ!」中で鉄パイプにドリルをくくりつける作業をしていたヒョットコ・オメーンの青年二人が愕然と顔を上げる。エスコートは片眉を跳ね上げ、アイサツした。

「ドーモ。はじめまして。エスコートです。少しお話を伺いたいのだが、よろしいかな?」

画像4

ヒ:ヒョットコ
体力          1     精神力           2    回避:0
カラテ		3	ニューロン    	2	
ワザマエ		2	脚力		2
ジツ		-	万札		2	
◇装備や特記事項
ジャンク・ガン:遠隔武器、ダメージ1 粗製

 ヒョットコ二人はしばし顔を見合わせていた。しかし結局はドリルくくりつけ前の鉄パイプを手に取り、エスコートへ「イヤーッ!

カテドラル:移動後カラテ
(1,2,4,4,5) ヒョットコ【体力】1→0 死亡!

 そこへ飛び込んでくる巨大な影!「エ……アバーッ!?」突き出された拳がヒョットコの片割れのオメーンごと頭を叩き割る! 当然死亡!

「エ……こんなのテストに」「イヤーッ!」「アバーッ!?

エスコート:集中カラテ
(3,3,4,6) ヒョットコ【体力】1→0 死亡!

 腰の引けた生き残りヒョットコの首が飛ぶ! イアイめいて鋭いボトルネック・カットチョップを繰り出したエスコートは、無造作に血を振り払いザンシンした。

「ア? なに、もうケンカ終わったの?」

「ウム。よく考えれば彼らの目的はわかっていたし、特にインタビューの必要もなかったのでね」

「インガオホーですね。まあ、その……ちょっとやりすぎてしまったかもしれませんけど……」

 床に転がる顔面損壊ヒョットコ死体に申し訳なさそうに手を合わせるカテドラル。部屋を覗き込んでいたシングルラブルはつまらなさそうに辺りを見渡し……板で覆われた横穴に目を留めた。

「じゃあオレ、そっち調べてくるよ。爺さんとカテドラル=サンはここで待っててくれ」

「大丈夫かね?」

「平気、平気。もしなんかいてもオレのカラテでやっつけてやっからさ」

 カラテパンチで数回空を切ってみせてから、シングルラブルは気楽な様子で板を取り外し奥へと潜り込む。エスコートはカテドラルを見やり、肩を竦めた。


◇◆◇◆◇


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「……ウワッ」

 部屋に入った途端に視線を感じ、振り向いたシングルラブルは小さく声を上げていた。部屋の奥にわだかまっているのはバイオネズミだ。相当の数がいる。

 スリケンを投げようとし、舌打ちして収める。たかがバイオネズミにビビった格好になると思ったからだ。視線を落とし、シングルラブルはさらに顔をしかめる。そこにあったのは食い荒らされた死骸!

「趣味悪ッ……あのヒョットコども、ここに放り込んでやりゃよかったんじゃねえの?」

 シングルラブルは再度奥のバイオネズミたちを睨む。鳴き声すら上げず、じっとこちらを眺める無数の目が無性に苛立たしかった。

 手ぶらで帰るのも癪だ。シングルラブルは散らばった死骸を蹴飛ばしつつ、なにか使えそうなものがないか周囲を見渡す。

レアトレジャー獲得
1d6 → 6
アイテム判定
1d6 → 6
スダチカワフ・バズーカ取得

「……オオッ?」

 無造作に散らばった骨の中に転がる金属質の筒めいた影に、シングルラブルは声を上げた。近寄り、手に取る。どうやら本物のバズーカらしい。ご丁寧に弾も入っている。

「なんでこんなもんが……まあいいや。もらっとくか」

 いい手土産ができたことを内心喜びつつ、シングルラブルは部屋を去ろうとし……気まぐれにバズーカの銃口をバイオネズミたちに向ける。少しも騒がずにこちらを凝視する彼らに舌打ちを残し、彼女は今度こそネズミの巣穴を後にした。


◆◇◆◇◆


「タダイマ! そっちなんかあったか、爺さん?」

「オカエリ。そうだな、彼らが例のヨロシマン襲撃に使おうとしていたこれくらいだ」

 静かにシングルラブルを出迎えたエスコートは、二枚のフロッピーディスクを掲げてみせる。表面には乱雑な字で「カギアケ」のショドー。実際、なにが収められているかわかりやすい。

「ふーん。あ、そうそう。これ爺さんにやるよ」

「……ずいぶんと物騒なオミヤゲだな。あそこにはなにがあったのかね?」

「死体とネズミ。なんでバズーカなんて落ちてたなんて知らねーけど、使えそうだし持ってきた」

 エスコートにバズーカを押しつけたシングルラブルは、代わりのつもりかフロッピーディスクの一枚を掠めとる。

 エスコートは目を丸くして思わぬ贈り物を見下ろす。たしかにこのメンツでこれを上手く使えるのは自分だろう。

 横穴に板を立てかけたカテドラルが跪き、手を合わせている。その装束と背中に生えた猛禽めいた白い翼のために、一瞬シンピテキなアトモスフィアさえあった。もっともそれを当人に言ったら機嫌を損ねるだろう。過去にカルト絡みで面倒な目に遭ったと聞いている。

 ……ZZZZZZMMMMMM……

 そのときだ。ケイヴ全体に走った小さな揺れに、エスコートらは反射的にカラテ警戒をとっていた。板の向こうからキィキィと騒ぐバイオネズミの鳴き声。

「……今のは?」

「さあな。なんだかわかんねえ。けど……気に食わねえのは確かだ。あのネズミども、オレが入っても騒ぎもしなかったくせに」

 続く動きがないことを確かめ、エスコートが警戒解除。シングルラブルは小さく舌打ちする。カテドラルが立ち上がり、眉根を寄せた。

「……洞窟の奥から揺れが来たように思います。行ってみますか?」

「後回しだな。洞窟そのものを揺らす力を持つなにかに、情報なしで突っ込むのはゾッとせん」

「じゃあヨロシマンか」

「そう、ヨロシマンだ」

 そういうことになった。


◇◆◇◆◇


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「あのサラリマン。ヨロシマンだっていったか?あいつが来てから例の病気が流行り出したんだ」

「一日中あの部屋に籠りっきりでホントにヨロシマンなのかだって怪しいもんだぜ。たまに外出てきたと思ったらネズミを捕まえたり碌なことしてないぜ絶対」

「ゲホッ…この前洞窟の奥でとんでもなく恐ろしい怪物を見たんだ。ありゃ間違いない、ニンジャだ!」

「「お前の自我が心配だよ」」

「はあ。お話ありがとうございます」

 ヨロシマンの部屋に向かう道中で遭遇したホームレス三人組。その取り留めない話に、カテドラルがきょとんとしながらもオジギをした。隣ではシングルラブルが欠伸を漏らしている。

 いずれにせよ、聞き逃さない要素はあった。あの『病気』と同時期にやってきたヨロシマン。どのような形であれ、関与していることは間違いない。エスコートは険しい顔で行先の闇を見据えた。

コモントレジャー回収
(1,2,5) 【万札】6→17
ホームレスたちは放置!


◇◆◇◆◇


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「ここがヨロシマンの住処か」

「実際わかりやすいですね……」

「たしかにウイルス持ってくる必要もあるんだろうけどさァ……」

 扉を前に、エスコートらはぼそぼそと言葉を交わし合う。実際このセタガヤ・ケイヴにおいてそこは異質極まりない。なにしろ最新式セキュリティが備わっているのだ。ここだけどこかからカットコピーしたような異質ささえ感じさせる。

「じゃあ、早速ウイルス入れるか」

「ああ、待ってくれ。少し試させてもらいたい」

 シングルラブルを制止し、エスコートは取り出したLANケーブルを自身の生体LAN端子に接続。そしてセキュリティシステムに直結した。この生体LAN端子は新式のものであり、彼がこれを使ってハッキングを行うのは初めてのこと!

エスコート:ハッキング解錠判定
(1,1,1,2,2,2,3,3,4,4,4,6) 成功

 電子的攻防も現実からすれば一瞬のことだ。プシュー……気の抜けた音とともにロック解除されたドアを前に、エスコートは額の汗を拭いつつ直結を解除する。ギリギリの成功だった。

「そういう形でハッキングができるのですね」

「大したもんだよな。平気か、爺さん?」

「フゥー……ああ、すまないね。問題ない。早速面会といこうか」

 やや心配そうに覗き込むシングルラブルに答えつつ、エスコートは立ち上がり……ドアを開く。

「誰だ君達は?」

 中でUNIXと向き合っていた白衣の男が驚いたように振り返る。部屋の内部はカーペットが敷かれ、テーブルの上にはUNIXの他に用途の不明なシリンダー等が乱雑に置かれている。見ようによっては大学の研究チームのフィールドワークの前線基地と見えなくもない。

 エスコートはアイサツを繰り出そうと、

「もしかしてニンジャか? そうか本社は遂に“彼”の危険性を理解したんだな!」

「ドーモ……スミマセン、今なんと?」

「私の名はロウム。ヨロシマンだ。状況は困難だが一緒に克服しよう! 明日もヨロシサン!」

 戸惑うエスコートの手を握り、ロウムと名乗った男は勢いよく手を振った。その目はギラギラと輝き、まるで尋常ではない。

 そのまま手を引かれ、エスコートはなすがままに侵入。その後ろからおそるおそるカテドラルとシングルラブルが続く。

「ニンジャが三名! 素晴らしい! これならば"彼"をどうにか駆除……否、捕獲すらできるやましれぬ……!」

「誰だよ彼って。アンタの知り合いか?」

「なんだ、本社からなにも知らされていないのかね? 彼、即ちプレイグ。私のチームが開発したバイオニンジャだ」

 ようやくエスコートから手を離したロウムは、どこか神経質な笑みを浮かべながらシングルラブルを見やる。たじろぐ彼女へ、エスコートは手振りで話を続けるよう指示。ロウムの目を盗んでUNIXへ。

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 シングルラブルは恨めしげにその背中を睨む。代わりにカテドラルがロウムへ語りかけた。

「スミマセン。ヨロシサンにはお世話になっているのですが、バイオニンジャ? の情報はいただいておらず……」

「そう、か。いや、本社としても無闇に情報を開示するわけにもいかなかったのだろう。許してほしい。プレイグ=サンは……元々コクシ・ジツを最大限活用するために生み出された特殊なバイオニンジャなのだよ」

「コクシ? いったいどのような……」

「端的に言ってしまえば、ネズミを媒介に病を振り撒くジツだな。ヨロシサンで事前にこのワクチンを作成しておき、感染が広まったところでそれを売り出す。株価向上とイメージアップに繋がるというわけだ!」

「なっ……!?」

 カテドラルが言葉を失う。UNIXにハッキングを試みていたエスコートも思わず振り向いた。シングルラブルが顔をしかめ、口を開く。

「まあ、コンセプトはどうでもいいよ。そのビョーキさ、ワクチンでどうにかできるもんか? すげぇ強力だった……じゃない、だって聞いたぜ」

「……う、ウム……実際、私は苦境に立たされている。プレイグ=サンは小型でカワイイなニンジャだった。だから私一人でも捕まえられる……そのはず、だったんだ……」

「捕まえ……オイ、逃したのかよ!?」

「状況は極めて悪い。このセタガヤ・ケイヴという環境ゆえか、プレイグ=サンは私の想定よりも遥かに強大なニンジャとなっていた。そのジツもだ! もしこのまま放置すれば……計算上、1週間で彼はロンドンの大疾病を再現してしまう!」

 ロウムは頭を抱え、蹲る。その目から落ちた涙がカーペットを濡らした。自責の念故か。彼の言葉をすべて理解できたわけではないものの、このままでは取り返しのつかない大惨事が巻き起こる。カテドラルとシングルラブルはそう理解した。

エスコート:ハッキング
(1,2,2,3,3,3,4,5,5,6,6) 成功
シャナイヒ級バイオニンジャ生体情報 取得

「理解はしました。尽力してみましょう……ところで」

 バイオニンジャ生体情報を吸い上げたフロッピーをそれとなく懐にしまいこみながら、エスコートはロウムを見下ろす。

「そのプレイグ=サンとやら、イマトヤキを集めているのでは?」

「おお……おお、その通りだ。実際あれは不可解な行動だ。イマトヤキに含まれる特殊な金属成分に惹かれているのかもしれないが……」

「成る程。では我々はこれで。そのプレイグ=サンとやらの駆除に向かいます」

「頼む……いや、待ちたまえ! まずソウカイヤに増援を頼むのだ! カトン使いを揃える必要がある! セタガヤ・ケイヴはもはやバイオネズミの楽園、奴らごと焼却処分しなければ……!」

 喚くロウムを残し、エスコートは退室。シングルラブルらも顔を見合わせてから彼を追った。


◆◇◆◇◆


画像8

「爺さんよ、実際どうすんだ? ここでケリつけんのか?」

「そうしたいところではあるが、実際難しいだろうな。ここは敵のフーリンカザン。どうにかして外に誘き出したい」

「どうにか、ねぇ……」

 屈み込んだカテドラルの頭上で、シングルラブルとエスコートはニンジャブリーフィング中。ではカテドラルはなにをしているか? 実際のところ、彼女は小さな穴にその腕を突っ込んで弄っている。

 ネズミの巣であろうその中に、なにか光るものを見つけたからだ。シングルラブルによればヒョットコのところの巣穴にもバズーカが落ちていたらしいし、こちらにも役立つものがあるかもしれない。そう考え、危険を承知で探っているというわけだ。

 その手がなにか硬いものを掴む。

カテドラル:フェレット・オア・キューソ?
1d6 → 2 【万札】17→24

「よいしょ。これは……」

「装飾品の類だな。まあ、売れそうではある」

 エスコートの言葉に、カテドラルはわずかに悄げる。いらないところで時間を潰してしまったか。

「カネはカネで役に立つからいいけどよ、カテドラル=サンも考えてくれよ。プレイグとかいうのを洞窟の外に連れ出す方法」

「外に……うーん……その、マネキネコを使えばいいのでは」

 あっさりとした提案に、エスコートとシングルラブルは驚いた様子でカテドラルを見た。立ち上がった彼女は慌てたように言い繕う。

「あ、いえ、その。理由はよくわからないですけれど、そのプレイグ=サンはマネキネコを集めているのですよね? だったらそれを持ち出せば、怒って追いかけてくるのでは、と……その……ゴメンナサイ。忘れてください……」

「いや。実際いい手だ。それでいこう」

 エスコートは状況判断する。UNIXから吸い上げたデータから見るに、プレイグはこのケイヴ最奥部を巣にしている。そこにマネキネコが集められている可能性は極めて高い。

 それにしても、と彼は苦笑する。ただマネキネコを買いに出ただけなのに、ずいぶんと大ごとになってしまったことだ。招かれたのは不運か、それとも幸運か。それは先に進まないとわかるまい。


【キャット・インバイト・ビッグマウス】#2終わり。#3へ続く

 

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